若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-

Keep paddling大阪大学免疫学フロンティア研究センター
瀬川 勝盛

この度は歴史ある日本生化学会奨励賞を頂き、長田重一先生をはじめ、これまでご指導頂いた諸先生方に心より御礼申しあげます。若い学生さんに向けてということでしたので、研究生活で大切にしてきたポイントをご紹介できればと思います。

楽しむ。研究生活は楽しいことばかりではないということは重々承知している(嫌というくらい経験してきている)のですが、それでも結局自分が楽しいと思えることを探すしかないと思っています。自分の研究結果を楽しむのはもちろん、同僚や後輩たちの実験結果に一喜一憂するのもまた楽しいものです。さらに、近年の生命科学や医学の著しい発展には感動すら覚えます。次世代シークエンスや遺伝子編集、光遺伝学、さらにはartificial intelligenceなど革新的な技術が次々と現れ、これまで不明であった生命現象が解明され、疾患治療へ応用されていく様子を身近に触れることのできる研究者という職業は本当に楽しいものだと思います。分野やテーマ、それらの社会的な重要性などは関係なく、自分が本当に夢中になって楽しめるものを楽しむだけだと思ってます。私たちが持つ時間は有限であり、不可逆的です。夢中になれるものが現在見えなかったとしても、それを探しながら、それでも今を楽しもうと思っています。

Surfing。とても下手なのですが、サーフィンが好きです(最近は全く行けてませんが)。
サーフィンと研究はよく似ていると思います。まず、相手が自然です。いい波の時もあれば、波がないとき、大荒れの時もあります。私たちがコントロールできるものではありません。波の状態が悪い時は、海に入ることすらできません。何をしに遠くまで来たのだろうとも思いますが、海を見ているだけで不思議と良い気持ちになります。また、逆に良い波は大勢の人たちで同じ波を取り合います。私も一生懸命漕ぐ(paddling)のですが、上手な人にすぐに先に乗られてしまいます。波に一番に到達できたとしても、波にのまれて失敗することもあります。上手な人と自分を比べて、嫌になるときもあります。それでも、また波はやってきます。稀に自分が一番に波に到達でき、そしてその波に乗れた時の感動は大変なものです。そして又、稀に乗れる波を夢見て海に行き、一生懸命paddlingし続けます。毎日研究室に行き、生命現象の理解を夢見て実験を繰り返す研究者と似ていると思いませんか?
最後に、ある著名なサーファーの言葉をご紹介いたします。

Flow with it, be part of it.
Don’t panic, just relax.
Don’t give up, keep paddling.

 

瀬川 勝盛   氏 略歴
2004年 大阪府立大学工学部卒業
2009年 大阪大学大学院生命機能研究科卒業
2011年 京都大学大学院医学研究科 助教
2015年 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 助教
2017年 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 准教授