会長だより

会長便り第2号 学会誌「生化学」~横溝岳彦企画委員長に聞く~

2016.6.27

みなさま、こんにちは。今回の会長便りでは本会の和文誌「生化学」についてご紹介します。個人的なことで恐縮ですが、「生化学」は私の研究人生を決めるきっかけを与えてくれました。オートファジーという言葉や大隅良典先生のお名前を知ったのは、実は1997年1月の「生化学」に掲載された大隅先生の「みにれびゅー」を読んだ時でした。今回は、「生化学」の編集長にあたる企画委員長の横溝岳彦教授(順天堂大学)にお話しを伺いながら、「生化学」を詳しく紹介していきたいと思います。

水島:こんにちは。横溝さんは現在、企画委員長という立場ですが、それ以前は「生化学」に対してどのような思い出がありますか?

image001-1横溝:生化学会奨励賞をいただいたときに、「生化学」に総説を執筆したのがとても印象に残っています。自分の研究を長い総説としてきちんと書かせてもらったのは「生化学」が初めてでした。酵素学からスタートして受容体発見にいたるまでの一連の研究の流れを執筆しました。また、脂質研究の分野では「生化学」に多くの総説が掲載されていて、大学院生の頃は、「生化学」で総説を読んだあとに、孫引きで原著を読むという形で勉強していました。それだけに、その雑誌に自分が執筆できるチャンスをいただけたことをとても名誉なことだと感じました。水島さんと一緒の受賞でしたね。

水島:そうでしたね。私もまとまった分量の総説を書かせていただき、有りがたかったです。横溝さんはいつから企画委員長をやられていますか?

横溝:2011年1月からですから、もう5年半になりますね。

 

論文の選考・審査プロセス

水島:「生化学」に掲載される論文はどのようにして選ばれているのですか?

横溝:まず、約30名の企画委員と約30名の企画協力委員に「総説」と「みにれびゅー」執筆者の推薦を依頼します。推薦された執筆者と執筆内容を、年に2回開催される企画委員による会議で審議して候補者を選んでいます。総説は原則として研究室主宰者(PI)に依頼し、ある程度の期間をかけて成し遂げられた一連の研究について、その周辺を含めて執筆していただいています。総説では著者の研究の流れや、研究への思いを感じてもらいたいと思っています。一方、みにれびゅーではトピック性のある話題について短く解説していただいています。

水島:みなさん、忙しくてなかなか書いてくれないとか?

横溝:ところがそんなことはなくて、ほとんど断られませんね(笑)。特に、非会員の先生からは「生化学誌から執筆の依頼を受けて大変光栄です」とのお礼のメールを頂くことも多いです。

水島:論文は自分から投稿することもできるのですよね?

横溝:はい。会員からの投稿も受け付けています。自分で直接投稿することもできますし、企画委員に売り込んで推薦が可能かどうかを聞いてみるという手もあります。また、年に3回の「特集」企画があります。これは支部選出の企画委員を中心に、自由にテーマを選んでいただいています。

水島:投稿後のプロセスはどのようになっていますか?

横溝:原則として2名の委員で査読します。推薦した企画委員と、私か青木淳賢編集総務(東北大学)が論文内容の査読を担当します。また、事務局には生化学事典にならった用語や図の体裁などをチェックしてもらいます。ほとんどの場合は一度のリバイスを経てアクセプトとなります。2015年は総説は44報、みにれびゅーは57報掲載しました。

水島:大変な努力によって論文の質が保証されているということですね。

 

その他のコーナーについて

水島:他にもいろいろとコーナーがありますが、特に宣伝は?image002-2

横溝:「北から南から」というコーナーで研究室を紹介してもらっています。特に、ラボをもってから間もない研究者に、できたてのラボを紹介してもらっています。

水島:なかなか面白いですよね。これは研究室をもってからの年数とか制限はあるんですか?

横溝:特にそのようなことはありません。自主投稿は大歓迎ですので、是非ラボ紹介の原稿をお寄せいただきたいと思います。大学院生募集、ポスドク募集、という宣伝も歓迎します。

 

オンライン化について

水島:2014年からは「生化学」はオンライン版も始まり、会員は全員無料で閲覧できるようになりました。一方で、冊子体は有料配付となり、冊子体購読者は大きく減りました。だいぶかわりましたか?

横溝:机においてパラパラとみるという機会が減ったと思います。これはやはり心配のひとつです。一方で、若い方はそもそもウェブ閲覧に慣れていて、本があっても読まないことがあるのかもしれません。メールで目次を配信すると、当日はかなりクリックされているようなので、これも時代の流れだと感じています。

水島:私もメールが届くと目次に目を通しています。読みたい論文にワンクリックでいけるのは便利だと思います。他の利点はどうでしょうか?

横溝:動画が貼り付けられるようになりました。これはまだ知らない方が多いんじゃないかと思いますが、オンラインなので、顕微鏡イメージのムービーなどを論文に含めることができるんです。是非活用して欲しいですね。

 

編集の方針など

水島:編集をしていて困ることや工夫していることは?

横溝:執筆していただく分野が偏らないようにいつも気を遣っています。そのために、企画委員や、より若い世代の企画協力委員を幅広い分野から選ぶように心がけています。また、企画委員が交代するときも、後任は単独指名ではなく、複数の候補を挙げてもらって、その中から全体のバランスを考えながら選ぶように工夫しています。

水島:全体の運営はどうでしょうか?

横溝:私の任期中には、それまではほぼ消えかかっていた「北から南から」を発掘したりはしましたが、編集方針の大きな枠組みについてはいじってきませんでした。今後は少しずつ検討しても良いかと思っています。

水島:医学に関連する雑誌は多くある中で、「蛋白質核酸酵素」や「細胞工学」がなくなりましたよね。

横溝:「生化学」では、流行にとらわれない基礎的なしっかりした仕事を紹介することが大事だと思っています。また、必ずしもトップジャーナルに掲載されたものだけではなく、価値のある研究だと思えば「生化学」では積極的に取り上げています。「蛋白質核酸酵素」や「細胞工学」が休刊になった今、「生化学」はもはや生化学会だけの雑誌ではないと自負しながら編集を行っています。

 

会員のみなさんへメッセージ

水島:最後に企画委員長の横溝さんから会員のみなさんへのメッセージをお願いします。

横溝:「生化学」はきちんとした研究を日本語で読める貴重な和文誌です。しかも会員であれば無料で読むことができます。是非活用して欲しいと思います。若い研究者の方には、自分の研究と関係の無い記事でも、読んでみることをお勧めします。水島さんのように人生が変わるかも知れませんよ。また、企画委員や企画協力委員はボランティアで頑張っています。良い点でも悪い点でも、フィードバックをいただけることが何より嬉しいのです。お褒め・お叱り・ご意見など、何でも事務局まで連絡いただきたいと思います。

水島:どうもありがとうございました。

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