若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-
研究を続ける力大阪大学免疫学フロンティア研究センター
櫻木 崇晴
このたびは、このような名誉ある賞をいただき、身の引き締まる思いです。まだ道半ばの研究者ではありますが、私のこれまでの経験が、これから研究を志す方々にとって少しでも参考になればと思い、研究生活を振り返ってみたいと思います。
細胞は、その生涯の最期にホスファチジルセリンを細胞膜の表面へと露出します。それは周囲の細胞への合図であり、個体の恒常性を守るための「最後の意思表示」とも言える現象です。その背後で働く膜タンパク質であるスクランブラーゼの分子実体が明らかになった頃、私は長田重一先生の研究室に大学院生として加わり、その作用機構の解明に挑む機会をいただきました。細胞の終焉の瞬間に働く分子。その精緻な仕組みを理解したいという思いに、胸を躍らせながら研究を始めました。
スクランブラーゼの構造決定を中心的な目標としたのですが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。X線結晶構造解析に取り組んだ5年間、構造は決まりませんでした。条件検討を重ねても結果が出ない日々が続き、心が折れそうになる瞬間も多々ありました。それでも続けられたのは、「この分子の姿を見てみたい」という単純な好奇心があったからだと思います。最終的にクライオ電子顕微鏡によって構造を捉えることができた時の喜びは、今も忘れられません。
このように研究を進められたのは、ひとえに長田先生をはじめ研究室のメンバー、共同研究者の方々のおかげです。構造解析に挑戦するのは研究室として初めての試みだったので、技術を学ぶため、多くの先生方にご指導いただきました。どの先生も、部外者の私に、惜しみなく時間を割いてくださいました。長田先生には、生化学の基礎を徹底的にご指導いただいたばかりでなく、研究への向き合い方も学ばせていただきました。私は、実験する前に理屈を積み上げ過ぎてしまう性格なのですが、先生の「面白そうならまずやってみよう」という言葉が背中を押してくれました。思い返すと、そうして試した実験が、思いがけない突破口につながることが少なくありませんでした。
研究をしていると、一見良さそうな結果が出ても、後で落胆することは多いです。それでも、感情を押し殺すのではなく、日々の結果に一喜一憂することが、結果的に研究を続ける力になっていたように思います。改めて思うと、こうした姿勢も長田先生や研究室の先輩方から学んだものでした。結果を前に本気で喜び、次の展開を楽しそうに語る姿を見て、研究とはそういうものなのだと感じたのを覚えています。私自身もまだ挑戦の途中ですが、これからも一日一日を大切に進んでいきたいと思います。
櫻木 崇晴 氏 略歴
2013年 京都大学医学部医学科卒業
2013年 天理よろづ相談所病院ジュニアレジデント
2019年 大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了 博士(医学)
2019年 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任研究員
2021年 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任助教(現職)



