JB編集委員長 菊池 章大阪大学大学院医学系研究科)

    
 私は、2014年からJournal of Biochemistry (JB;http://jb.oxfordjournals.org/)の編集委員長を務めます。JBの現状につきまして、生化学会会員の皆様に紹介させていただきます。JBは柿内三郎先生が東京帝国大学医科大学医化学講座教授に就任されてから、我が国の研究業績を世界の学界に発表する必要性を痛感され、「外字生化学雑誌」を個人で刊行されたことに端を発します(生化学 63, 1087‐1131,1991)。第1巻1号は1922年に創刊され、1945~1949年に第二次世界大戦の影響により一時休刊になったことはありますが、今日まで日本生化学会の英文機関誌として、我が国の研究を世界に発表する場となってきました。創刊の年は日本生化学会発足(1925年)よりも早く、我が国の最も古い英文学術論文誌の一つです。JBでは、伝統的な生化学領域に加えて、分子生物学、細胞生物学、バイオテクノロジーに関する幅広い生命科学領域の論文を掲載しています。

最近の4年間では年間300~400編のOriginal articlesの投稿があり、70~100編が採択されていますが、傾向としまして海外、特に中国、インド、韓国からの投稿が増加し、全投稿数の約半数は海外からのものになっています。論文投稿から最初の判定まで平均20日以内というスピードで査読が行われています。

生化学会の個人会員の皆様は、創刊号より無料で全文をダウンロードすることができます。そのためのUser NameとPasswordをご存じでない方は、JB編集部までメール (jb-jbs@jbsoc.or.jp) でお問い合わせ願います。会員以外の方々につきましても、出版社(OxfordUniversityPress)のご好意により、JBの優れた論文を読んでいただくために、毎月2編の論文をFeatured article として無料で配信しています。さらに、iPhoneやiPad、アンドロイド等のモバイル機器からも簡単にアクセスできるウエッブサイトも用意していますので、是非お気軽にJBをご覧になっていただきたいと思います。

 

レイアウト表紙

インターネットを用いてのPC上で論文を読む機会が増えていますので、パソコンの画面でも読みやすいレイアウトを目指しています。前編集委員長の宮園浩平先生のご尽力により、表紙が大変美しくなりました。「Nature in Japan」では、日本の四季折々の美しい花々の写真を表紙としています。「Discovery in Japan」では、我が国の素晴らしい研究成果を表紙として掲載しています。掲載論文の中から表紙に相応しいFiguresがあれば、表紙として採用させていただくことも考えています。

 

JBのページとJB論文賞

会誌「生化学」では毎号(2014年からは隔月発刊となります)JBのページに論文ダイジェス卜が和文で掲載されていますのでご活用ください。また、JBに掲載された論文の中から、毎年JB論文賞が選出されており、2013年は10編の論文が選ばれました。選出された論文は日本生化学会大会会場で授賞式が行われるとともに、受賞論文1編につき、賞状と賞金(10万円)が贈呈されます。

 

Rapid communication

JBが掲載するOriginal articlesには、RegularpapersのほかにRapid communicationsがあります。Rapidcommunicationsにはインパクトが高く、速報性を要する論文を取り上げることになっていますが,現在は必ずしも十分に活用されていません。今後、Rapidcommunicationsを見直し、優れた論文をいち早く紹介するように改善していきたいと考えています。是非、会員の皆様方もRapid communicationsへのご投稿をお考えください。

 

ReviewarticlesReflections and PerspectivesCommentary

Original articlesに加えて、JBでは主として我が国の生化学・生命科学分野における最新の優れた成果をReview articlesとして紹介してきました。2014年以降もReview articlesの掲載を継続するとともに、トピックス性の高い総説を2~3編集めた特集を組むことも考えています。Reflectionsand Perspectivesは、2009年から開始された企画で、我が国の卓越した研究者について研究内容やお人柄を含めて、ゆかりの深い方にご紹介していただいています。Commentaryは、2011年から企画されたもので、JBに発表された論文の中でインパクトの高いものを選んで、その内容について読者にわかりやすく解説します。これらの原稿執筆を、会員の皆様にお願いすることになりますが、是非ご協力賜りますようお願いいたします。

 

投稿数とImpact Factor

JBの編集上の問題点につきましても、会員の皆様と現状を共有する必要があるかと思います。先ほど、年間投稿数が300~400編と記載しましたが、実は年々減少の傾向にあります。競合する学術誌がこの数年間に創刊されたことも原因ではあるかと思いますが、投稿数減少が編集上の問題としてのしかかってきます。

Journalの評価の一つにImpact Factor (IF) があります。IFの功罪につきましては多々議論されるところではありますが、IFの低いJournalよりも高いJournalに掲載されたいと思うのは研究者の偽らざる気持ちだと思います。JBのIFは2009年の1.945から2012年の2.719に上昇しています。生化学系の学術誌のIFが下降傾向にある中でよく健闘しています。2009~2012年の高引用論文はJB2014年1月号に掲載していますので、ご覧下さい。

しかし、論文の質をIFに頼っていいのかという問題点も指摘されています。生化学会長の中西義信先生は会長便りで「DORAによる論文評価標準の提言」を紹介されています。JBの立ち位置が問われているのかもしれません。このようなJBの抱える問題点につきましても会員の皆様のご意見を頂戴できればと思っています。

 

生化学会員の皆様へのお願い

JBは、これまでも質の高い研究成果をOriginal articlesとして発表し、またReview articlesとして紹介してきました。会員の皆様方がJBに論文を投稿し、JBの論文を積極的に引用していただくことが、JBの発展に必須です。今後もJBの更なる発展のために会員の皆様の更なるご支援をお願いいたします。