多様性と相互作用の場
JB編集委員長 五十嵐 和彦(東北大学大学院医学系研究科)
2026年1月より前編集委員長・中西真先生の後任としてThe Journal of Biochemistry(JB)編集委員長を担当することとなりました。元より微力ではありますが、科学者として生化学会に育てていただいたことに感謝しつつ、JB誌の発展に貢献できるよう日々取り組んでおります。会員の皆様のご協力とご指導を賜りますよう、謹んでお願いを申し上げます。
JB誌は歴代の編集委員長のご尽力のもと、世界的にも高い評価を頂くジャーナルに発展してきました。中西真先生は、学術出版が直面する様々な新たな課題に取り組んでこられました。若手が論文出版に審査側から参加する機会を広げるために、審査員候補の自薦を始めています。論文投稿に伴う負担を軽減するため、初回投稿時のフォーマットは自由となりました。掲載論文の質を担保することがジャーナルの質向上に直結しますので、例えば、昨今のPaper Mills問題にも慎重に対応してきました。
このような取り組みをさらに進めるとともに、意見交換のフォーラムとしてのジャーナルの役割を拡充することも求められていると考えています。あわせて、審査そのものの質を高めていく必要があると認識しています。現在、査読の質は査読者個人の経験に大きく依存する傾向があります。今後は、査読者に対する実践的ノウハウや情報提供を充実させることで、投稿頂いた執筆者の満足度を一層上あげていきたいと考えます。
さて、世界は数年前には予想もしなかった激動の時代に入ってきました。サイエンスを開かれたものにして文明を豊かにし、発見の成果を社会に行き渡らせるという理想だけでは世界は動いていなかった、そのような無力感を覚えることもあります。ですが、このような政治的経済的緊張の時代だからこそ、科学の価値が試されているとも感じます。科学の健全な発展とレジリエンスは、生態系と同様に多様性と相互作用によって育まれます。もし科学の価値基準や中心がメガ出版社のビジネスモデルや特定の地域に偏るなら、それは生態系の多様性を失わせる行為に等しく、停滞と脆弱性をもたらすでしょう。JB誌は、日本の科学の下で生まれた問いと発見を、世界に発信する責任があります。それは決して「内向き」ではなく、科学の健全性そのものです。また、アジア諸国からも成果発信や情報収集の媒体として、JB誌が地域をつなぐことに期待を頂いています。各地域・各国に専門ジャーナルが存在することの意義を再確認しながら、編集委員会の皆様と連携して編集に取り組みたいと考えています。
JB誌は、これからも厳格で建設的なピアレビューを通して、国内外の優れた研究成果を公平に評価し、世界中の研究者が参加しやすい場を提供し続けます。ぜひ、著者としての論文発表と査読者としての論文評価の両面から、JB誌へのご協力をお願い申し上げます。皆様からのご意見もお待ちしております。
JB編集委員会:https://www.jbsoc.or.jp/organization/varios_committee#jedit_b



