若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-
これまでの研究を振り返って京都大学大学院生命科学研究科 加藤 裕教 (平成24年度掲載)
私は現在、細胞の形態や運動性を制御する分子メカニズムについて、Rhoファミリーの低分子量G蛋白質を介したシグナル伝達を中心に研究を行っています。私が“研究”ということに携わるようになったのは大学の学部四回生の始めに行われた研究室への配属からですが、配属された当時は生理活性物質であるプロスタグランジンの受容体の研究をしていました。やはり最初は右も左もわからず、先生や大学院生の先輩方の指導の下、とにかく実験は一生懸命やっていたことは覚えています。ある時、当時神経細胞のモデル細胞としてよく用いられていたPC12細胞を使って、あるプロスタグランジン受容体サブタイプを特異的リガンドで刺激したところ、PC12細胞の神経突起が短時間でみるみる退縮していくことを偶然見つけました。この時からRhoファミリーG蛋白質の研究に魅力を感じて現在に至っているのですが、やはり当時研究室の主流とは全く違う分野に踏み込むことに私自身少しためらいもありました。それでもここまで研究を進めることが出来たのは、全く違う分野にも関わらず私の研究に対して真剣に向き合って頂き、その後現在に至るまであらゆる場面で非常に適格なアドバイスをして頂いた指導者の存在が大きかったと思います。今振り返ってみると、実際に手を動かして実験を行い、その結果を直接目にするのは自分自身であり、その積み重ねの中で、ある時おもしろい現象を見つけることが出来るかどうかはやはり自分自身に寄るところが大きいと思います。それに加えて、価値ある研究成果を残すためには、適切な方向へと研究を導いて頂く良き指導者に巡り会うことが必要であることも強く感じており、今後は私自身が良き指導者としてこれから研究者を目指す人たちに対して少しでも力になれるよう努力していきたいと思います。
最後に、やはりいい仕事をしていい論文を発表すると、自ずと同じ分野を研究する知り合いが増え、そのような人たちとさらに親睦を深めることで、中には本当に信頼し合える人とのつながりを築くこともできました。自分にとって貴重な財産となっている人とのつながりをこれからも大事にしながら、今後もさらにいい研究をしてこのつながりを広げていきたいと思います。