若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-
My two cents1 理化学研究所開拓研究本部
2 東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻
岩崎 信太郎 1,2
この度は、日本生化学会奨励賞という栄誉ある賞をいただけたことをこの場をお借りして感謝申し上げます。メンターの先生の方々 (渡邊雄一郎先生、泊幸秀先生、Nicholas Ingolia先生)、研究室でおなじ時間を過ごしてくれたlab mateの皆さん、自分の研究室をスタートさせてから研究を一緒に進めてくれた室員の皆さん、さらに国内外の共同研究者の皆さん、と非常に多くの方々と研究させていただいた貴重な時間があっての賞になります。自分というよりも、皆さんの研究の素晴らしさが評価された賞であると僕自身は理解しているところです。差し出がましいですが、若手の研究者の方がたに自分の経験を踏まえ、”just my two cents”を少しお伝えしたいと思います (あくまで個人の独断と偏見で一般論ではないと思うのでその点ご容赦ください)。
アカデミア志望の若手研究者のみなさんは、学位取得後、ポスドク先選びに大いに悩むと思います (自分も例に漏れません)。その上で、アドバイスをすると、なるべく学位取得時の研究から離れた研究をすることを推奨します。自分自身の研究を定義するにはいくつかパラメーターがあると思います。例えば、1. 扱っている生物種 (マウス、植物、酵母、etc.)、2. 主たる研究手法 (遺伝学、生化学、インフォマティクス、細胞生物学、etc.)、3. 研究領域、などがあるはずです。可能な限り、この中で2つできれば3つ全部変えてください。
そもそもですが、ポスドク後、そのまま研究者として独立することを「前提に」ポスドク先を決めてください。私はアメリカでポスドクしていたのですが、多くの場合3-5年以内に独立するか、biotechに異動するか決まってきます。特にアカデミアを目指す場合は、ポスドクでやっている仕事がそのまま、独立後の仕事になります。その時に、必ず聞かれるのが、自分自身とメンターはどう違うのか、自分のoriginalityはどこか、ということです。学生のときにやっていたことが違えば、その点ポスドク先のPIともPh.D.メンターのPIとも差異が必ずでるので、その点説明しやすくなります。同じことをやっているPIは日本に (もちろん世界にも)二人いりませんので、ぜひ違うexpertiseをポスドクでは身につけてください。アメリカではどれだけ学生時代に業績があっても全く勘案されないようで、全てはポスドクになってからの仕事で評価されます (日本では必ずしもそうではないかもしれませんが)。
最近は学生の方々が、ポスドクに進んでくれない現状があって歯がゆいですが、ぜひ研究を生業にしてくれる若手の研究者が多く出てくれることを期待したいと思います。自分なりにサポートしていきたいところです。
岩崎 信太郎 氏 略歴
2006年 東京大学教養学部生命・認知科学科 卒業 学士
2008年 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系修士課程 卒業 修士 (学術)
2011年 東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻博士課程 卒業 博士(生命科学)/Ph.D.
2011-2013年 東京大学分子細胞生物学研究所 助教 (泊研究室)
2013年 Postdoctoral Scholar Fellow Department of Embryology, Carnegie Institution for Science, Ingolia Lab
2013-2016年 Department of Molecular and Cell Biology, University of California, Berkeley, Ingolia Lab
2016-2017年 理化学研究所 准主任研究員 (PI)
2017年-現在 理化学研究所 主任研究員 (PI) (2018年より理化学研究所開拓研究本部)
2017年-現在 東京大学新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 客員准教授