若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-

“当たり前”を見直す富山大学学術研究部医学系
夜久 圭介

 この度は栄誉ある日本生化学会奨励賞を賜り、関係者の皆様ならびにこれまでご指導くださった先生方に厚く御礼を申し上げます。

 私の研究テーマは『メタボロミクスによるNAD+代謝の包括的な解析』です。日本では、多くの著名な先輩研究者たちがNAD+代謝経路の解明に関わってきました。実際に、奨励賞の応募に際し、過去の受賞者一覧を確認したところ、1963年に西塚泰美先生が『「動物体内におけるトリプトファンからニコチン酸リボヌクレオタイドの生合成に関する研究」ならびにそれに関連した業績』で受賞されていたことを知りました。このような歴史ある研究分野に関するテーマでの受賞に、身の引き締まる思いです。

 代謝経路の研究はすでに完成された分野のように思われるかもしれません。しかし、科学の進展はこれまでに築かれてきた知見を新たな視点から捉え直すことで生まれることもあります。測定技術や解析手法の進歩により、「理解された」とされてきた経路も、より生理的な代謝の観点から検討できるようになっています。今回の私の研究も、既存のNAD⁺代謝を現代の技術によって再評価したものです。このように、技術の進歩によって新たな代謝動態などが明らかになる点は、生化学研究の大きな魅力の一つではないでしょうか。

 博士課程に在籍する皆さんは、新しい技術や概念に柔軟に適応できるという点で大きな強みを持っています。既存の知識体系に染まっていないからこそ、これまで当然とされてきた前提を疑い、新しい概念を提示できるポテンシャルがあります。私自身は、博士課程修了後の進路を考える際には、研究分野だけでなく研究環境も重要であると考え、「PIが若いこと」を一つの条件としてポスドク先を選びました。若い研究室では研究の方向性や方法論が固定化されておらず、日々の議論を通じて新しい視点を得る機会が多かったと感じています。また、ラボが発展していく過程を間近で経験できたことも、貴重な経験となりました。

 最後になりますが、本稿を読まれた皆さんの興味と自由な発想の下で生化学分野が発展していくことを願っております。

 

夜久 圭介 氏 略歴
2009年 大阪市立大学生活科学部 卒業
2014年 大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了 博士(生活科学)
2014年 Postdoctoral Scholar, Department of Biochemistry, University of Iowa
2015年 富山大学 先端ライフサイエンス拠点 研究員
2016年 富山大学 医学薬学研究部(医学) 病態代謝解析学講座 研究員
2019年 富山大学 学術研究部医学系 分子医科薬理学講座 助教
2024年 富山大学 学術研究部医学系 分子医科薬理学講座 講師
2025年 富山大学 学術研究部医学系 分子医科薬理学講座 准教授