100周年のご挨拶

日本生化学会会長
横溝岳彦

日本生化学会は本年で創立100周年を迎えることとなりました。100周年記念事業特集ホームページの公開に当たり、日本生化学会の会長としてご挨拶申し上げます。 

100年という歴史の中で、日本生化学会は科学の進化と共に歩み、多くの素晴らしい成果を生み出してまいりました。私たちの先達や同僚たちの努力によって生命の複雑なメカニズムが解明され、得られた知見は医学や諸産業の進歩の大きな礎になっています。日本生化学会がこのような使命を果たしてきたことを心から誇りに思います。 

100周年という節目は、過去の栄光を称えるだけでなく、未来への挑戦を共有し新たな展望を描く重要な機会であると考えます。これまで我が国の生化学者達は、多くの生体分子を単離精製・分子同定し、極めて再現性の高いデータを誇ってきました。一方で、21世紀に入った後は、ヒトゲノムプロジェクトの終了を受け、ビッグデータの解析に代表される新しい研究手法がとめどなく開発され、欧米や中国の研究者の後塵を拝する事も多くなってきたように案じています。私たちは、更なる生化学の発展とその成果を社会に還元するために、新しい研究手法の開発や獲得を諸外国と協力しながら貪欲に進めていかなければならないでしょう。新たな研究領域の開拓や様々な課題に取り組み、それを乗り越えていくことで、日本生化学会が更なる飛躍を遂げることができると信じます。 

また、これまでに培われた研究者同士の連携や友情を大切にし、次世代に継承していくことも重要な課題です。若手研究者、女性研究者の育成や国内外との交流を通じて、次世代の生化学者たちが世界に羽ばたくことを支援し、日本生化学の名を世界に広めていくことが、我々の責務であり使命であると考えています。 

日本生化学会が100周年を迎えることは大きな喜びであるとともに、さらなる責任が生じる事も意味します。この100周年記念事業特集ホームページの公開に加え、2025年の第98回大会(京都)では、岩井会頭の元で100周年記念行事が開催される予定です。また、2027年には私自身が会頭として第100回記念大会を横浜で開催致します。これからも学会員の皆様と協力して日本生化学会が未来においても進化し続けるよう尽力してまいります。会員の皆様のご協力と支援をお願い申しあげる次第です。 


第98回日本生化学会大会会頭
岩井一宏

日本生化学会は2025年に100周年を迎えることを祝して、2025年11月3日-5日に京都で開催致します第98回日本生化学会大会の初日の午後に100周年を記念する式典と記念講演会を開催する予定でございます。京都での式典に先立って本学会のホームページで100周年記念事業特集ページを作成することになりましたので、第98回大会の会頭として一言ご挨拶申し上げます。 

日本生化学会は1925年に設立されて同年10月に第1回総会を開催致し、それ以後毎年大会を開催して参りました。100周年を記念する大会が第98回であることに違和感を感じされる方も多いかと存じますが、第二次世界大戦中に大会の開催が途絶えたことがございましたことがその理由でございます。 

生化学は生命現象を化学的な視点から解析する研究分野で、日本生化学会は6名のノーベル賞、4名のラスカー賞受賞者を輩出するなど、世界の生命科学の発展に大きな貢献をして参りました。ただ、ワトソン、クリックのDNA二重らせんの発見を端緒として、生命現象を分子レベルで解析する、いわゆる分子生物学が生命科学を席巻する様になってから、生命科学の研究者の中には生化学は古い学問分野の様に思われている方もおられるかもしれません。しかし、地球上の生物は全て生体高分子から構成されており、生命現象はそれらの生体高分子の活性制御、低分子有機物の代謝などが中核的に機能しています。また、生命現象を駆動するエネルギーも化学結合に内包されたエネルギーを利用しています。また、近年、腸内細菌が産生する代謝物がヒトの恒常性維持に関わることも示されつつあります。すなわち、化学反応が生命現象の根幹であり、それゆえ、化学の視点から生命現象を解析する重要性は決して色褪せることはなく、生化学的な解析は生命科学には不可欠で、今後は生化学的な視点なしに生物の機能を解析することは不可能であると思われます。 

近年、生命科学の解析手法は飛躍的に進歩して新たな技術が次々と導入され、生命科学は分子生物学、生化学、生理学、薬理学などの細分化された視点からではなく、複数の視点から生命現象を俯瞰してサイエンスを展開することが求められる時代になっています。日本生化学会の大きな特徴は理工医薬農など異なるバックグラウンドを持った研究者からなる学術集団である点です。その特長を活かしつつ、この100周年記念事業が今後の科学を担う多様な視点を持った若い方々と一緒に生化学、生命科学の新たな方向性を議論し、日本の生命科学の一層の発展の契機となることを願っております。 

100周年に向けて

学会誌「生化学」

「生化学」誌第一号
「生化学」誌vol95 no.6 2023

創刊100周年(2025年)特集号

学会誌「生化学」では、研究成果の詳細解説(総説)、最新トピックス研究の小解説(ミニレビュー)、新しい研究手法の紹介(テクニカルノート)に加え、昨今の研究事情に対する意見・提言(アトモスフィア)、新研究室の紹介(北から南から)など、生化学にかかわる記事を掲載しています。投稿規定に沿った投稿も受け付けています。

The Journal of Biochemistry(JB)

JB 創刊号
JB vol.172 no.3

JB編集委員長 中西真(東京大学医科学研究所 教授)

Journal of Biochemistry誌は、1922年に創刊された日本で最も歴史のある英文科学雑誌の1つで、2022年に100周年を迎えました。
初代の柿内三郎先生をはじめ、歴代の編集委員長の献身的な尽力あり、今や国際的な生化学雑誌としての地位を確立しました。本セミナーではこれまでの取り組みを紹介するとともに、ジャーナルの最新動向をお伝えします。

生化学会学術大会

創立100周年記念大会(第98回2025年)

創立100周年記念大会(第98回2025年)

日本生化学会は2025年に創立100周年を迎えます。第98回大会では岩井一宏氏(京都大学)会頭の下、様々なプログラムを企画しています。100周年記念特別シンポジウムではノーベル賞受賞者の先生方を海外からもお招きし、また、祝賀会、市民公開講座も開催予定です。

第100回大会(2027年)

100周年に引き続き、第100回大会となる2027年開催の大会に向けても、企画を進行中です。


ロゴデザイン公募

公益社団法人日本生化学会は大正14年(1925年)4月4日に創立され、大正15年(1926年)に日本医学会に加盟した、わが国で最も伝統のある学会のひとつです。令和7年(2025年)に設立100周年を迎えるにあたり、設立100周年のシンボルとして「日本生化学会設立100周年記念ロゴマーク」のデザイン案を広く募集いたします。


ご寄附のお願い

公益社団法人(公社)日本生化学会では、会員の方々はじめ広く一般の皆様に、生化学研究へのご支援を頂くためのご寄付をお願いしています。