会員の皆様
細胞小器官用語検討委員会(委員長 水島昇氏)より “ 「小胞体」の名称の検討について” の報告書のまとめが
届きましたのでお知らせいたします。
全文掲載サイトはこちら:
https://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2026/04/ER_20260417.pdf
公益社団法人 日本生化学会
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「小胞体」の名称の検討について
細胞小器官用語検討委員会 委員長 水島昇
長年、「endoplasmic reticulum(以下、ER)」の訳語として「小胞体」という名称が使用されてきました。しかし、「小胞体」と「小胞」の名称が類似しているため、細胞全体に広がる大規模な構造であるERと、各種の小さな小胞が混同されることがしばしばあります。また、近年では高校教科書において主要用語には英語が併記されるようになっていますが、「小胞体」と「endoplasmic reticulum」には大きな乖離があります。このような教育上の課題を背景に、日本細胞生物学会*、日本生化学会、日本解剖学会、日本分子生物学会、日本遺伝学会(賛同順、*は提案学会)の5学会は合同で細胞小器官用語検討委員会(資料1)を設置し、「小胞体」の名称について見直しの是非を含め検討を行ってきました。その結果、現時点では名称の変更は行わず、問題点を整理して共有するにとどめることとしました。
<歴史的経緯>
1940年代、電子顕微鏡を用いた研究により細胞内の網状構造が観察され、1953年に「endoplasmic reticulum(ER)」と命名されました(文献1、文献2)。日本では1955年に「小胞体」という名称が提唱され、現在まで広く用いられています(文献3)。当時すでに、ERが扁平な構造を含む多様な形態をとることが認識されていましたが、小さな囊状構造が主体であると考えられ「小胞体」と命名されました(文献3)。当初はERの同義語として提唱されたようですが、その後、訳語として定着しました。なお、「小胞体」は「ミクロソーム」(超遠心分離法によって得られるER断片を含む細胞画分)の訳語ではなく、両者が異なる概念であることは命名当時から認識されていました(文献3)。
その後、三次元電子顕微鏡法や蛍光顕微鏡法の発展により、ERは細胞全体に広がるシートおよびチューブ状の細胞小器官であることが明確になりました。このため、「小胞体」という名称は現在の理解と必ずしも整合しないものとなっています。実際、これまでにも「小胞体」という名称の不適切さを指摘する意見は存在しました。例えば、「ERは、小胞体と呼ぶにはふさわしくない広がりを持っている」として、「膜胞体」という用語が提唱されたこともあります(文献4)。なお、諸外国では「endoplasmic reticulum」が直訳されるのが一般的で、中国語では「内质网(≒内質網)」と表記されています。



