会長だより

  • 会長だより第5号:~第93回日本生化学会大会のアンケート調査の結果と今後の日本生化学会大会について~

    • 生化学会会員の皆様

       

       日頃から生化学会の活動にご尽力いただき、大変有難うございます。9月14~16日に第93回生化学会大会が史上初めて完全オンライン形式で開催されました。予期せぬCOVID-19の影響で、5月に通常開催形式からオンライン開催形式への変更を急遽決定し、それから配信システムを構築するという緊急事態でした。しかし、大きなトラブルもなく大会を終了できましたことは、深見希代子会頭と大会組織委員の先生方、事務局職員の方のご尽力と会員の皆様方のご協力によるものと心から感謝申し上げます。参加者、発表者とも例年の約2/3でありましたが、それは致し方ないことかと思います。来年以降、これまで通りの参加者、発表者が集う大会となることを信じています。本日は、先日皆様方にいただきました第93回日本生化学会大会のアンケート調査の結果につきましてご報告し、今後の大会のあり方を一緒に考えたいと思います。アンケート結果は、生化学会のHP (http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2020/10/52f9523867fbd1824817371f7e3cce8a.pdf)(左のメニュの大会→(下までスクロール)大会終了後アンケート→第93回大会) に掲載してありますので、ご覧ください。

       

       回答者は940人で、うち生化学会員は838名、大会参加者は823人でした。参加された方の76%は、大会プログラム全体に、「大いに満足」または「満足」(以下満足)されていました。プレナリーレクチャーならびにシンポジウムは、80%以上の参加者が満足されていました。一方、口頭発表は72%、ポスター発表は62%とやや満足度が下がっていました。来年以降の大会のあり方についての質問に対しましては、「従来通りの会場での開催(オンサイト)」と「一部を会場で一部をオンラインとするハイブリッド」は、ほぼ同数で42%ずつの支持があり、一方「完全オンライン」は13%と少数の方が支持されました。この傾向は、年代に関係なく、20代から70代以上まで、ほぼ同様でした。したがいまして、多くの会員が現地で開催する対面型の大会を望んでおられ、今回のような完全オンライン型の開催は必ずしも望んでおられないことがわかりました。大会に参加することの意義は、自身の研究内容を発表し、意見をもらったり、新しい知見に触れたりすることに加えて、旧交を温め、新たな知人を増やしたりすること等、現地に赴き直接人と会うことにあると、改めて認識しました。勿論、オンライン開催のメリットも多数あり、参加のための移動時間を必要としないことは素晴らしいと感じました。いろいろな理由で、家庭や職場を離れることのできない研究者が、大会に参加でき、また、大会後もストリーミング配信により発表内容を視聴できることも、大きなメリットです。海外の著名な研究者に来日していただくことなく、その講演を視聴できることも、これからの国際化を考える上で貴重な経験でした。

       

       自由記述の欄には、たくさんの貴重なご意見をいただきました。これらのご意見は理事会ならびに大会組織委員会で共有させていただき、今後の大会開催のあり方に反映させていただきたいと思います。参加費につきましては、高いという回答が45%あり、厳しいご意見も多数いただきました。この点につきまして説明をさせていただきます。生化学会大会のような3000人規模の会議を1か所で開催できる会議場は限られています。その会議場を3日連続して使用するためには、3年以上前から予約をしなければなりません(開催3日と準備日1日の4日間使用)。また、会議場にもよりますが、1年以上前(366日以前)のキャンセルであれば全額の30%、365日前以降のキャンセルでは全額の50%、1か月前のキャンセルですと全額を、キャンセル費として支払わなければなりません。今回、私共もキャンセル費の減額につきまして会議場と交渉をいたしましたが、会議場側も管理や従業員の雇用があり、簡単ではありません。さらに、オンサイト開催ではないために、企業展示による収入等は全く無くなりました。通常の生化学会大会をパシフィコ横浜のような会議場で開催するためには、私共の参加費だけで賄うことは不可能で、大会予算全体の収入の約半分は、企業の展示や広告、ランチョンセミナーによる収入や財団等からのご寄付によるものです。大会収支が赤字となり、生化学会本体から多額の補填をすることになりますと、公益社団法人として生化学会が本来なすべき活動を縮小しなければなりません。このような事情により、完全オンライン形成としました第93回大会におきまして、例年通りの参加費とさせていただきましたことを、是非ご理解いただきたいと思います。大会の収支等につきましては、総会でご報告いたしますので、ご出席いただければ、生化学会ならびに大会の財政につきまして、ご理解いただけるものと思います。これからの大会のあり方としまして、会場予約をすることなく、完全オンラインですることを決定すれば、参加費を減額できると試算しています。

       

       これらを踏まえまして、来年の第94回大会の開催方針につきまして、深水昭吉会頭を中心とする大会組織委員会において計画していただいています(https://www2.aeplan.co.jp/jbs2021/)。来年のCOVID-19の状況につきましては、未だ予測がつかない状況ですが、ハイブリッド方式を計画されているとのことです。ハイブリッド開催方式の難しさは、どのプログラムをオンサイトで、どのプログラムをオンラインで行うかの割合を決めることです。これは大会場の確保やオンラインシステムの構築等、大会の運営や予算に直結します。ある程度の人数が会場に集まり、同時にオンラインも可能にし、予算面でも無理をしないということは大変難しい問題です。このような問題につきまして、会員の皆様のご意見やお知恵を是非いただきたいと思います。

       

       アンケートでは、今後の大会のあり方として英語化(国際化)についてもお尋ねしました。生化学会大会ではこれまで、使用言語は自由であるため、基本的には日本語を使用してきました。一部シンポジウムに外国人講演者が参加する場合にのみ英語発表を行っていました。アンケート結果では、「言語は自由が望ましい」が最も多い意見でした(複数回答可の設問で43%)。一方、「半日あるいは1日程度であれば英語セッションの枠を導入すべきである」と「企画シンポジウムは英語で行う」はあわせれば22%、「口頭発表のスライドのみ英語」と「プログラム、要旨、ポスターは英語」はあわせれば35%の回答もあり、英語化に前向きとも取れる意見もありました。自由記述のご意見は「日本で行い、日本人がほとんどの大会だから、日本語ですべき」から「この時代、英語化は当然」まで、多種多様です。私も、日本語で発表し討論する方が、理解が深まるというご意見には賛同しますが、私達生化学会会員は基本的に日頃から、英語の文献を読み、英語で論文を執筆しています。生化学会の機関誌のJ Biochemistryが1925年に発刊された理由は、まさに英語化に対応するためでした。それから約100年が経ち、オンライン形式により、国際会議に参加しやすくなる環境が作られつつあります。勿論、前述の通り現地に赴き、人と直接会話することの重要性はありますが、人の往来が必要なくなるという意味で極めて効率的です。このような機会に、生化学会大会も恒常的にプログラムの一部は英語化し、海外からのオンラインでの参加者を増やすことを考える時期になっているのかもしれません。次回会頭の深水先生も生化学会大会の国際化に向けて、いろいろな案を考えておられるようですので、会員の皆様が協力して盛り上げていただけることを期待しています。

       

       第93回日本生化学会大会は、私達にこれまでにない多くの経験をさせてくれました。完全オンライン開催となり、「こんなことができるんだ」、「これは違うな」等、参加された皆様方はいろいろな感想を持たれたと思います。その経験をこれからの大会のあり方、ひいては生化学会そのもののあり方にポジティブになるように生かしていただき、今後とも生化学会の活動にご協力いただけますようお願い申しあげます。

       

      2020年10月30日

      会長 菊池 章

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