若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-

平成29年度掲載分

未知なる島を目指して辻田 和也
神戸大学バイオシグナル総合研究センター

  •  将来は船乗りになって、世界の海を航海したい。海の目の前で生まれ育った私は、広大な海に漠然と憧れていました。しかし、そんな冒険のような職業は現代にはないことに気付き、失望したように思います。小学校低学…

人から信頼される研究者に東北大学大学院 医学系研究科
鈴木 未来子

  • 奨励賞を頂いた研究は、私にとって、まさに奇跡の連続でした。今回はその奇跡的な出来事についてお話したいと思います。白血病でみられる3番染色体転座において、GATA2遺伝子のエンハンサーが、原がん遺伝子E…

あなたの知らない世界東京大学薬学系研究科
名黒 功

  •  大学院生の時、パッチクランプ法を使って心筋のL型Ca2+チャネルについて研究していた私は、「いま測定しているCa2+が細胞に入った後、細胞内で何が起こるのだろう?」とふと思いました。もちろん、心筋な…

詰将棋的研究と数手先しか読めない研究国立遺伝学研究所
北川 大樹

  •  将棋の名人戦などでよくみる長考の際に、トップレベルの棋士はどの程度先の手を読んでいるのでしょうか?その局面にもよりますが、意外にも十手先を読むのもなかなか大変ということを聞いたことがあります。大局的…

幸運に恵まれるためには東京薬科大学生命科学部
中村 由和

  • この度、日本生化学会奨励賞という大変栄誉ある賞をいただけたのは、良き師に恵まれたことをはじめとして、とにかく幸運であったためであると思っています。そのため、偉そうなことを書ける立場にはありませんので、…

平成28年度掲載分

変わらない勇気と変わる勇気東京農工大学大学院工学研究院
浅野 竜太郎

  • このような大変栄誉ある賞を頂きましたこと、まずこの場を借りて、ご指導頂きました先生方、また献身的に実験を行って頂いた補佐員ならびに学生の皆様に心より御礼申し上げます。流動的なアカデミックに於いて、卒業…

自分の結果を大切に東京大学大学院薬学系研究科
大戸 梅治

  • このたびは、自然免疫系Toll様受容体の構造生物学的研究に関して日本生化学会奨励賞を授与いただきまして大変ありがたく存じます。私がこの研究を始めたのは修士1年のときですので、もう10年以上にわたって続…

継続は力なり久留米大学医学部
杉島 正一

  •  この度は「ヘム代謝関連酵素の構造生物学的研究」という研究課題に対して、日本生化学会奨励賞という歴史ある賞を頂き、関係の諸先生方に熱く御礼申し上げます。今後、この賞に恥じないように研究に邁進していく所…

未来に貢献する科学者を目指して九州大学大学院理学研究院
松島 綾美

  •  『「ちょっと古くなった肝臓を交換してくる。明日から、また、お酒を心置きなく楽しめるよ。」そういって、同僚は実験室を後にした。私は不器用で、要領も悪いので、昔から何をするにも人一倍時間がかかる。颯爽と…

世界を旅する論文を追いかけて東北大学大学院医学系研究科
田口 恵子

  •  昨年は大学卒業後15年の節目でしたが、どうした巡り合わせか、何人かの大学同期生に会う機会に恵まれました。アメリカでPIになった人、研究とは違う領域で留学した人、たまたま仕事で大学を訪問してきた人、な…

平成27年度掲載分

勉強もしないと東京都医学総合研究所
佐伯 泰

  • まだまだ現役で手を動かしているものとして、若い方への文章を書くというのは中々難しいのですが、1つ後悔していることを書いてみます。この数年、遺伝学や質量分析計を用いたスクリーニングをたくさんしていま…

何を研究するのか京都大学 医学研究科 医化学教室
鈴木 淳

  • 大学院生に向けてということで、今回の生化学会奨励賞受賞テーマである細胞膜リン脂質のスクランブル機構になぜ取り組んだのかを書きたいと思います。大学院を卒業して幸運にも長田重一先生の下でポスドクとしてトレ…

学問の王道東京大学医学部/マサチューセッツ工科大学コーク癌総合研究所
鈴木 洋

  •  この度は、マイクロRNA (microRNA)の生合成と遺伝子発現調節機構に関する研究について、日本生化学会奨励賞という大変名誉ある賞を頂戴し、諸先生方ならびに学会関係者各位に厚く御礼申し上げます。…

「体のなかのスイッチ」に魅せられて京都大学大学院生命科学研究科
生沼 泉

  •  高校生の頃から発がんのメカニズムに興味があり、中でも「Rasという小さなスイッチ役たんぱく質の1カ所の変異でも細胞をがん化してしまう」ということに衝撃を受けました。この衝撃が今でも研究のモチベー…

Chance favors only the prepared mind東京大学
西増弘志

  • この度は「立体構造から迫る酵素の作動機構」の研究に関し、日本生化学会奨励賞をいただき大変光栄に感じております。私は北海道の田舎に生まれ、研究とは縁のない環境で育ったのですが、幼少の頃からなぜか、生…

平成26年度掲載分

酵素の声に耳を傾けなさい名古屋大学 細胞生理学研究センター
阿部一啓

  • 私が胃プロトンポンプの研究をする契機となったのは、北海道大学在学時、恩師である谷口和弥先生と出会いでした。谷口先生はナトリウムポンプが専門で、イオン能動輸送の重要性とダイナミックな構造変化の熱心な…

四十にして惑わず奈良先端科学技術大学院大学
末次 志郎

  • この度は、名誉ある日本生化学会奨励賞を頂き身に余る光栄でうれしさをかみしめています。 大学入学当時、何となく研究者、あるいは、学問を志していた私は、細胞の形態形成を学ぼうと、当時東大医科研にあった…

感性を刺激するもの東京工業大学 フロンティア研究機構
中戸川 仁

  •  大学院生に向けて、とのことでしたので、在り来たりな話題にはなりますが、研究テーマを決める際の一助になればと、私の経験を書かせていただくことに致します。  私は学部生の時、ワトソンの「遺伝子の分子生…

ニッチを知り、ニッチをつくる。慶應義塾大学医学部 / 国立国際医療研究センター研究所
田久保圭誉

  •  医学部医学科の学部教育カリキュラムにはそれほどきっちりとした研究に携わる教育プログラムは組み込まれていないため、研究に興味を持っている学生は自然とカリキュラム外で研究室に出入りするという行動…

生化学研究の道を歩んで~心に残る出会いと言葉神戸大学大学院 医学研究科
金川 基

  • 「生化学って面白い」と思ったのは、学部での生化学実習の時です。生体試料からタンパクを精製し、その酵素学的な特徴をひとつひとつ調べあげる実験が、ゲル上でCBBに染まっているにすぎなかったタンパクに生…

平成25年度掲載分

偉くなる前の時間を大切に公益財団法人微生物化学研究会 微生物化学研究所
野田 展生

  •  私は学生時代の6年間、東大薬学部の佐藤能雅先生の研究室で蛋白質結晶学の基礎を学びました。この期間が私の研究者としての基礎であり、とても貴重な時間であったと確信していますが、当時は強い危機感も抱い…

糖鎖・脂質・タンパク質研究の魅力大阪大学 微生物病研究所
藤田 盛久

  •  この度は、私のようなものに栄えある賞をいただきまして、誠にありがとうございます。これまで御指導くださいました地神芳文先生(産業技術総合研究所)、木下タロウ先生(大阪大学)をはじめ、多くの皆様に深…

雑多でも良いじゃないか理化学研究所 脳科学総合研究センター
斉藤 貴志

  •  「分子生物学から先に入った奴は、蛋白質の扱い方が雑だ。でも蛋白質(生化学)から入った奴は、分子生物学の実験も丁寧にやれる。」そう先輩に言われたのが、大学院博士課程の時でした。今にして思うと乗せら…

観たいものを観る努力と才能国立遺伝学研究所 構造遺伝学研究センター
伊原 伸治

  • 蛋白質を精製してその特性を決める、明快な研究手法と蛋白精製の困難さに魅せられ、大阪大学の谷口直之先生の生化学教室の門を叩きました。なんとか学位をいただけるだけの仕事をして、さてポスドク先を選ぶに…

生命現象の分子基盤解析九州大学大学院理学研究院 生物科学部門
小柴 琢己

  • 私が学位を取得してから早12年が過ぎようとしています。大学院生当時、私は北海道大学・新田勝利教授のもとで、球状タンパク質のフォールディングに関する熱力学的な解析(生物物理学)を行っておりました。…

平成24年度掲載分

「硫酸、硝酸、核酸」という順番名古屋大学大学院医学系研究科 内村 健治 (平成24年度掲載)

  • 栃木県のとある古書店で一冊の本をやっと見つけた。僕が産まれた年に刊行された「生化学の諸切片」という教科書である*。実はこの副題に僕は心がひかれた。副題は 「硫酸、硝酸、核酸」である。 私は学生のころか…

これまでの研究を振り返って京都大学大学院生命科学研究科 加藤 裕教 (平成24年度掲載)

  • 私は現在、細胞の形態や運動性を制御する分子メカニズムについて、Rhoファミリーの低分子量G蛋白質を介したシグナル伝達を中心に研究を行っています。私が“研究”ということに携わるようになったのは大学の学部…

研究を楽しむということ国立遺伝学研究所
平田 普三

  •  子供の頃から、動物に興味があり、主に昆虫を捕まえては動き回る様子や食ったり食われたりする様子をずっと眺めていました。今思い返すとひどいことをしていたものですが、これが現在の研究興味の根源だったと…

「不思議だな、何故だろう?」と思ったら大阪大学大学院理学研究科
野尻 正樹

  •  この度は、異化的硝酸還元系(嫌気呼吸系の一種)の蛋白質電子伝達反応に関わる一連の研究成果におきまして、日本生化学会奨励賞という大変名誉ある賞を頂戴し、学会関係者各位ならびに諸先生方に厚く御礼申し…

平成23年度掲載分

自分が本当に面白いと思う研究をする立命館大学生命科学部
三原久明

  •  私は、京都府立大学農学部農芸化学科の鈴木讓先生の研究室において、当時助手であった渡部邦彦先生の指導の下、プロリン残基導入による酵素の耐熱化に関する研究に携わりました。今にしてみれば、この時期に、…

「見えぬけれどもあるんだよ。見えぬものでもあるんだよ。」京都大学ウイルス研究所
豊島文子

  •  金子みすゞさんの「星とたんぽぽ」と題する詩にある上記の文句は、私の座右の銘です。今回の生化学会奨励賞を頂くことになった「細胞分裂軸」の研究は、まさにこの言葉を発端としています。私がこの研究を始め…

古くて新しい風変わりな糖鎖の研究名古屋大学大学院医学系研究科
岡島徹也

  •  この度は、糖転移酵素の機能に関する一連の研究成果に関しまして、日本生化学会奨励賞を授与頂きまして、日本生化学会の関係各位に厚く御礼申し上げます。私が10年来従事しております糖鎖研究は、これまで生…

路傍の花大阪大学大学院理学研究科
石水 毅

  •  生命の基本現象の神秘を化学で見てみたい、という漠然とした思いを抱き、学部4年生の時に、阪大蛋白研の崎山文夫先生の研究室に入室しました。データに高い質を求められる厳しい研究室でした。修士2年に上が…

平成22年度掲載分

新しい研究を切り開きたい東京医科歯科大学
石原直忠

  •  私が九大三原研で大学院生としてミトコンドリアの研究を始めてから15年以上になる。博士研究としてミトコンドリアの生化学研究手法を学んだ後に、岡崎の基礎生物学研究所の大隅良典先生の研究室にポスドクと…

「花形」研究より「奥の深い」研究を神戸大学大学院医学研究科
伊藤俊樹

  •  私が理学部4年生だった1990年代の前半、生命科学の分野ではいわゆる「細胞内情報伝達」の研究が隆盛期を迎え、実験医学の特集号に毎月のように取り上げられるほどの「花形」研究分野となっていました。大…

独自の芸風を磨く東京大学大学院総合文化研究科
佐藤 健

  •  大学院生の頃から生体膜に興味を持っていました。生体膜の機能はもちろん興味深いのですが、その機能を調べるために生体膜から部品を取り出し、組み立て直して、生体膜機能の一部を人工膜上に再現する「プロ…

折れない心~無駄な実験だと決めつけない~東京大学大学院医学系研究科細胞情報
進藤英雄

  •  この度は平成21年度の生化学会奨励賞に御採択頂きありがとうとうございます。大変光栄であり、今後この賞に恥じぬよう研究を進めて参りたいと思います。  私は東京大学大学院医学系研究科細胞情報学教室…

All We Need is “Biochemistry”岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体機能化学分野
田中智之

  •  深く考えずに行った選択が良い結果を招くことは幸運以外の何ものでもありませんが、京都大学薬学部で市川厚先生の主宰する衛生化学研究室(現在の薬学研究科生体情報制御学分野)に参加したことは、まさにそう…

平成21年度掲載分

「有髄神経をつくる」という研究に携わって国立成育医療センター研究所 薬剤治療研究部
東京工業大学大学院 生命理工学研究科
山内 淳司

  • タイトルを読むとなんだか難しい研究のように思われます。私もちょうど5年前までそう感じていました。私は、大学院では生化学・分子生物学を専攻し、それをベースにして博士研究員のときに分子薬理学的な研究を…

なんだかわからないものこそ面白い 群馬大学 生体調節研究所
佐藤健

  • 「答えのわかっている問題しか解いたことがないので、どうなるかわからないものを研究するのは不安です」 これは研究室見学に来た一人の学生が発した言葉であった。私は「わからないことを明らかにしていく」こ…

日本生化学会奨励賞を受賞して―これまでの研究生活を振り返って思うこと―神戸大学大学院医学研究科
生理学・細胞生物学講座 膜動態学分野
匂坂 敏朗

  •  この度は日本生化学会奨励賞を授与頂きまして身に余る光栄であるとともに大変身の引き締まる思いです。選考委員の先生方をはじめ、日本生化学会の関係各位に厚く御礼申し上げます。今回の受賞対象は、高井義美…

私の研究~時には感動を立教大学理学部生命理学科 山田康之

  • 私は1993年4月、学部4年の卒業研究の時に東工大資源研の吉田賢右先生の研究室に配属になり、大学院生、学振PDとして計10年間、吉田研究室で研究を続けた。PD終了後、当時東大生産研にいた、研究室の…

DNA分解の研究に魅せられて京都大学大学院医学研究科 分子生物学教室
川根 公樹

  • DNAが積極的に分解される。不思議な話に思えませんか?DNAは遺伝情報の原本で、半保存的複製によって合成されるため、RNAやタンパク質とは異なり、細胞内で代謝、分解されることはありません。しかし、…