日本生化学会について、定款・細則、組織、会員構成、支部、役員、各種委員会

会長からのメッセージ


日本生化学会会長
石川 冬木

 前会長の北 潔先生の後任として、2011年9月より日本生化学会会長を務めております石川冬木と申します。

 

 本会は、1925年(大正14年)に創立され、我が国における生化学の普及、発展に貢献してきました。本会が発行する雑誌「生化学」および「Journal of Biochemistry」は、国内外の生化学者の研究発表の場として高く評価されております。また、本会は、北海道から九州地区にいたるまでの八支部を擁し、各支部は独自の活動を通して地区会員の交流を促進しています。さらに、本会は「生化学若い研究者の会」をはじめとする様々な若手研究者の活動を支援してまいりました。

 

 現在、ほとんどの生命科学分野において、「生化学」は欠かすことのできない研究方法となり、学問分野が細分化するに伴い、学会が、あらたな切り口で会員のために貢献できる可能性を探ることが急務であります。

 

 私は、会長就任以来、さまざまな場で、会員の皆様に、今後の生化学会に期待するところをお伺いしてまいりましたが、非常に多様かつ重要なご希望・ご提案があることが分かりました。以下に、それらの中でも、私が特に重要であると考えておりますことを述べたいと思います。

 

 第一に、近年、大学院等で高等教育を受けた若手理系研究者が、その後のキャリアパスに対する不安などから、研究職についたり博士研究員等として外国で研究活動を行うことを避ける傾向が益々増大しております。この問題は、それぞれの研究者が最先端の研究成果をえるべく努力することはもちろんですが、我が国独特の構造的な問題もあり、一機関・一研究者だけの努力によって解決することはできません。生化学会には、学生会員はもちろん、中学校、高等学校、専門学校等の教員を務める会員が数多くおられ、我が国の科学の将来を担う青少年教育に努力されておられます。私は、さまざまな立場で中高等教育に参画する会員の皆様のご協力を得て、中高校生から大学院生に至るまでの若者の科学への興味を刺激する具体的な事業を行いたいと思います。

 

 第二に、我が国の生化学研究の幅の先細りを危惧する声が多く聞かれます。私の研究分野は、真核生物染色体の末端構造テロメアでありますが、2009年にノーベル賞を授与され、テロメア研究の母と呼ばれるElizabeth Blackburn博士がテロメアに興味を持ち始めたのも、DNAの末端はどのような構造なのであろうかという単純な疑問からでした。同博士は、テトラヒメナというその研究に適したモデル生物を用いて細々と、しかし、着実に研究を進め、テロメレースの発見にいたる大きな成果を得るに至ったのであります。

 

 近年、生化学研究に必要な機器の一部は高額化し、それらの高額機器を有効利用することで、初めて研究のブレークスルーを得ることができる場合があります。 その一方、このような高額機器予算の増大は、研究者人口の大型研究への収斂をもたらし、次世代の新しい研究領域の種を提供するはずの科学の幅、懐の深さを狭めている傾向も見られます。一般論として、科学において、大型プロジェクト研究と多様な個人研究の間は排他的であるはずはなく、それぞれが適切な規模で研究を鋭意展開し相互作用することで、独創的な研究が生まれるものと期待されます。私は、学会員の皆様と、このような次世代の生化学研究のあり方についても考えていきたいと思います。

 

 最後に、私は経験の乏しい一研究者でありますが、会員の皆様、支部および本部の執行部の皆様のご教示・ご協力を得ながら、生化学会の発展のために努力したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。