会長だより

  • 会長便り第7号: 最後の会長便り

    • 11月21日の総会をもちまして、2年間の会長任期を終えることとなりました。この間、至らぬ私を助けていただきました一條秀憲・水野健作両副会長、常務理事、理事、代議員、会員、事務局のみなさまに深く感謝申し上げます。学会長というのはもっと年配の先生が務めるものだと思っていたため、心構えもないままに始まってしまいました。そして、あっという間に終わろうとしていますが、思い返せばいろいろなことがありました。最後の会長便りとして、この2年間の大きな出来事をまとめてご報告したいと思います。

       

      年大会開催

      2015年は第88回大会が遠藤斗志也会頭によって神戸で(BMB2015として日本分子生物学会と合同開催)、2016年は第89回大会が山本雅之会頭によって仙台で開催されました。両会頭をはじめとして運営にあたられた組織委員のみなさま、会場で活発な発表と討議を行っていただいた会員のみなさま、ご支援いただきました企業のみなさまに改めて感謝申し上げます。また、2016年の仙台大会には地震で被災された熊本地方からも、さまざまな困難にも関わらず多くの会員が参加されました。大会では幅広い分野での情報交換が可能ですので、みなさまの研究に新しい視点、方向性、共同研究者が加わったとすれば、それは学会が最も望むことだと思います。前回の大野茂男先生との対談でもご紹介しましたように、今年のConBio2017はさらに広い枠組みが試みられます。活発な議論が行われることを期待しています。

       

      会員増! 会費収入増!

      本学会の会計年度末にあたる2016年8月と2017年8月を比較すると、会員は1名増加(8085名)、会費収入は200万円増加となりました。会員数が1名増えたことなんてたいしたことないと思われるかもしれませんが、1990年代後半以降会員は漸減していますので、減らなかっただけでも嬉しいことなのです。実際に会費収入も大きく増えていますので「幽霊会員」が増えたわけではありません。早石修記念海外留学助成などの新事業が会員呼び込みに効果があったのかもしれません。生化学会には、その他にも支部活動、学会誌「生化学」や「Journal of Biochemistry」の出版、奨励賞などの各種表彰事業、FAOBMBなどの国際活動などがあります。是非、これらの生化学会の特徴を、みなさまの研究室に新しく入った学生、研究員にご紹介いただき、生化学会への入会を勧めていただけましたら大変嬉しく思います。

       

      早石修記念海外留学助成をスタート

      2017年度から、新規事業として「早石修記念海外留学助成」をスタートしました。これは、小野薬品工業株式会社からのご寄付によるもので、毎年8名に対して500万円、総額4,000万円の海外留学助成を行っています。すでに助成対象者を2回選出しました。深水昭吉委員長をはじめとする選考委員のみなさまには大変なお仕事となってしまいましたが、たくさんの応募がありましたことは嬉しい悲鳴です。応募は本会会員であることが条件となりますが、その他は可能な限りフレキシブルにしています。留学をステップにして、「早石修記念」の名にふさわしい将来のリーダーが本会から輩出されることを願っています。選考は激戦ではありますが、若手会員のみなさまには来年以降も是非積極的に挑戦していただきたいと思います。

       

      財政健全化

      本会は一時大きな赤字が続いた時期がありましたが、2012~2013年以降は大幅に改善し、わずかな赤字で推移しています。これは、和文誌「生化学」をオンライン化し、冊子体は希望者のみに有料(2000円)で配布することにしたこと、事務局の常勤事務員を減らしたこと、事務局の努力によって運営経費を削減したことなどによります。「生化学」は現在1000部のみ印刷しており、ほとんどの会員はオンラインで読んでいます。2016年度は、経常外収支も加えると黒字となりました! 学会資産を考えると現在の学会財政は比較的健全な状況にあると思われますが、さらなる経営努力が必要なことも事実かと思います。2016年6月には公益法人化以降はじめての内閣府立入検査を受けましたが、公益事業として問題なく運営されていることが確認されました。

       

      大会のあり方に関する検討

      大会は本学会の最も大きなイベントです。「学会=大会」と思われる若手会員の方も多いと思います。今期理事会では大会のあり方について討議しました。特に、日本分子生物学会との合同大会の開催については、より長期的な視点にたって、会員にとってもっとも良い形態を考えるべきとの意見でまとまりました。一つの国で、生化学と分子生物学に関する大きな大会を別々に開催しているということは、世界でも極めて例外的なケースです。学会運営、会員のメリット、企業からの支援など、考慮すべきことは多くありますが、学会を超えて真剣に考えるべき時期になっていると考えられます。本会では、理事会での協議を得て、2016年5月に日本分子生物学会へ「大会のあり方に関する合同検討会開催の依頼」を文書で送付いたしました。この分野の現在そして次世代の研究者の育成に、学会がすべきことを考え続けていくことが重要であると思います。

       

      会費年度を4月~3月に変更

      生化学会の会費年度はこれまで1月~12月でした。しかし、これは一般の会計年度(4月~3月)とも生化学会の会計年度(9月~8月)とも異なるため、学生会員から一般会員への移行や、会費請求のタイミングなどにおいて必ずしもスムーズではありませんでした。そこで、理事会で討議し、生化学会の会費年度を一般年度と同じ4月~3月としました。大学や研究費の年度と同じになりましたので、会費支払いなどでの混乱が少なくなったと思います。移行期は、従来会員の会費は1月から翌年3月までを1年分としましたので、実質的には3ヶ月分をサービスとさせていただきました(学会の同一会計年度内ですので、学会の会計には影響していません)。

       

      男女共同参画学協会連絡会シンポジウム開催

      2015年11月からの1年間、本会が男女共同参画学協会連絡会の幹事学会を務め、2016年10月8日にはシンポジウム「国際的に見て日本の研究者における女性割合はなぜ伸びないのか?」をお茶の水女子大学で開催いたしました。午前中には分科会、午後には全体会議が行われ、盛会となりました。本会の小川温子常務理事(兼男女共同参画推進委員会委員長)を中心とした委員のみなさまには、準備から当日の運営まで大変お世話になりました。

       

      大隅良典先生ノーベル賞受賞

      これは本会の賞ではありませんが、本会名誉会員の大隅良典先生が2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞されたことは、基礎研究を対象とする本会には大きな喜びとなりました。大隅先生おめでとうございました!

       

      日本生化学会プロモーションビデオ制作

      生化学会の宣伝になればと思い、会長になってすぐに作ったのですが、どうもぱっとしなかったようです・・・ 8,000人も会員がいるはずなのに、未だに1,000回ちょっとしか閲覧されていないというのはいったいどうしたことでしょうか。経費削減のために恥を忍んで自分が出演したのが良くなかったのかも知れません。もうじきこのビデオは消滅すると思いますので、最後のチャンスに是非ご覧ください。アドバイスがありましたら是非事務局までお願いします。次作があれば、生かされるかもしれません。

      https://www.youtube.com/watch?v=GUUCmXZgTi0&feature=youtu.be

       

      最後に

      このように、みなさまに支えていただきながらの2年間でした。就任時にも述べましたように、研究者が誇りと自信を持って元気よく研究できるようお手伝いさせていただくのが学会の大きな役割だと思います。そのために十分なことができたかは自信がありませんが、「少し若めの会長にして気軽に意見を言ってやろう」ということでは、少しは成功した部分があったかもしれません。それでも、本来は私がすべきところ、やり残してしまったこともたくさんあり反省しております。それらを含めまして、次期会長・執行部のみなさまには、本会をさらに発展させていただけるものと思います。最後になりましたが、全会員のみなさま、関連企業のみなさまには、今後とも本会運営に変わらぬご協力、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

       

                                     2017年11月

                                     日本生化学会会長

                                     水島 昇

  • 会長便り6号:第90回日本生化学会大会 大野茂男会頭に聞く

    • みなさま、こんにちは。今回は、来月開催される第90回日本生化学会大会の会頭を務められる大野茂男教授(横浜市立大学)にお話しを伺いました。今度の大会は、生命科学系学会合同年次大会「ConBio2017」として開催されることになっています。ConBio2017は日本分子生物学会と日本生化学会が中心となり、35の協賛学会とともに合同年次大会を行うというもので、新しい試みが満載です。

       

      ConBio2017のミッション

      水島:大野先生は生化学会の大会というとどのようなどのような印象をお持ちでしたか?

      大野:初めての参加は修士一年の時でしたが、口頭発表で論文でしか知らないような先生から質問をされ、研究者の仲間入りをしたような気になって感激したことをよく覚えています。博士課程の途中で分子生物学会ができたので、それ以降、生化学会と分子生物学会にはずっとお世話になっています。プレナリーなどの素晴らしい講演で、印象に残っているのが多数あります。

      水島:今回はお世話する側の会頭をお務めになるわけですが、まずConBio2017のアピールポイントをズバリお願いします。

      大野:私は、大きな学会の大会の役割は2つあると思っています。ひとつは自分の研究の発表と関連分野の研究者との出会いの場としての役割です。もうひとつは、専門外や周辺領域の「予想もしていないこと」の発見の場としての役割です。今度のConBio2017では、前者の役割を維持しつつ、後者の役割を充実したつもりです。生化学会と分子生物学会に加えて多くの協賛学会の協力を得て、生命科学の様々な分野・領域の面白い部分をシンポジウム・ワークショップで企画しました。専門外や周辺領域の「予想もしていないこと」の発見の場としての学会年会のパワーアップを計ったつもりです。

       なお、前者に関しては、学会大会以外にも様々な専門領域に特化した集まりが多数あると思います。一方で、忙しい研究の合間に専門外の話に触れる機会は減じている様な気がします。そもそも、我々研究者は、自分の研究に一生懸命になればなるほど、視野が狭くなってしまいかねない危険に晒されていると思います。その意味で、時に予想を超えたものに出会うことはとても大事だと思います。

      水島:生化学会や分子生物学会のような大きな学会の役割は広い範囲の話題を提供することですが、今回はそれのさらなる拡大版ということですね。

      大野:まさにその通りです。そもそも「遺伝子」や「分子」というのは生命科学の共通言語のようなものだと思います。「遺伝子」や「分子」を扱う限り、生命科学の様々な分野との関わりが日常的に生じる時代になっています。その意味で、生命科学の様々な分野に触れる機会の提供は、大きな意味を持っていると思っています。生命科学系学会合同年次大会としてのConBio2017はそのひとつの試みです。生化学会と分子生物学会がそれを主導することに意味があると思っています。

      水島:生化学会と分子生物学会の合同開催のような大会の合同開催はありましたが、このようなコンソーシアム形式の試みはこれまでも話には上がりながらも、なかなか実現してこなかったわけです。

      大野:今回のConBio2017は、分子生物学会の篠原彰さんと語らって、生命科学系の学会の年会のあり方に一石を投じる事をめざしました。学会のトップを初めとするシニア研究者の方々が、学会の年会のあり方について真剣に考えていただく機会になる事を願っています。

       

      ConBio2017の特徴

      水島:次に、ConBio2017での新しいとりくみについてご紹介いただけますでしょうか?

      大野:分子生物学会の篠原先生とともに準備してきた新しいとりくみを3つ紹介したいと思います。第一は、オンデマンド配信です。大きな大会ではいくつものシンポジウムが並走してしまうため、聴きたい講演をすべて聴けないということが起こってしまいます。また、自分の専門分野の講演は聴かざるをえないとすると、新しい発見チャンスがなくなってしまいます。そこで、今回は一部の講演を録画して、大会終了後に一定期間オンデマンド配信することにしました。視聴は大会参加者に限定していて、誰が視聴したかもわかるような仕組みになっています。講演する側にしても、誰が視聴したかという情報が得られるのは利点だと思います。

      水島:日本では大きな会場に限界がありますので、どうしても部屋をたくさん使って並走するということになってしまいます。その制約が一部解決されることになりますね。

      大野: 第二の特徴は、参加証にバーコードをつけることです。これは協賛企業にむけた取り組みです。これまでも多くの企業に、展示やランチョンセミナーなどを通じて大会にご協力いただいてきたわけですが、研究者側からの情報を提供しやすい環境にあったとは言い難いです。しかし、大会を運営・開催するというのは、研究者と関連企業が協力して行うものですので、互いがそのメリットを享受すべきです。今回の参加証のバーコードは、企業展示などで読み取ってもらえればすぐに研究者情報を提供できるような仕組みになっています。

      水島:アメリカの一部の学会などではずいぶん前から取り入れられていたと思いますが、日本ではまだ手書きでアンケートに答えたり、名刺を交換したりというのが多いですね。勝手に読み取られるわけではないから個人情報的にも問題はないですね。

      大野:むしろ、研究者側にとっても手間をかけずに後でパンフレットを送ってもらったりできるわけですからメリットはあるはずです。嫌ならバーコードをかざさなければよいだけのことです。一方、企業側にも大会に協力することの効果がわかりやすくなりますので、双方にとってメリットがあると思います。

      水島:企業の協力無くして大会は成立しませんので、今後に向けても重要な取り組みだと思います。

      大野:第三は、プレナリーレクチャーのコンテンツ化です。大会では歴史に残るような講演がたくさんありますが、残念ながらそのほとんどはその場限りで消えて無くなってしまいます。それはあまりにもったいないことです。特にプレナリーレクチャーは、優れた教育コンテンツでもあり、人類の宝でもあります。学会の責任でアーカイブ化し利用すべきです。今回のプレナリーレクチャーの講演者の方々にはあらかじめアーカイブ化についてご説明しご了解を得ています。この貴重なコンテンツをどのように利用するかは、今後分子生物学会及び生化学会で考えていただきたいと思います。

      水島:大変重要なご指摘をどうもありがとうございました。90年以上の長い歴史を持つ生化学会が担うべき役割だと思います。私の任期もあと3週間となってしまいましたが、次期会長や理事会にもきちんとお伝えいたします。

       

      コンソーシアム形式について

      水島:さて、合同大会の企画・運営の舞台裏について少しお話を伺いたいのですが、今回は大規模な大会ということで特にご苦労が多かったのではないでしょうか?

      大野:まったくそのとおりです。過去の大会で行って来た企画については、学会事務局などに経験の蓄積ありますが、新たな試みについてはありません。今回は、このような新たな試みが多く、運営を仕切って下さったAE企画さんも、大変なご苦労をされたと思います。ですが、分子生物学会の篠原先生が大変なパワーと熱意で、日々生じてくる様々な問題の解決にご尽力くださいました。今回の試みで得られた貴重な経験の数々は、学会事務局に残りますので、次回以降にお役に立てると思います。そういう思いで行って参りました。

      水島:私も、学会事務局にノウハウが蓄積する仕組みは大切だと思います。会場の確保を含めた大会の基本的な枠組みが確立していれば、大会運営の効率化ができると思います。ところで、このようなコンソーシアム形式は今後どのような位置づけになっていくと思われますか?

      大野:国際的な見地から見た場合に、大会がカバーする研究者の規模と、学術分野の範囲を考えて比較するとわかりやすいかもしれません。例えば、米国は研究者はわが国の倍以上あると思いますが、それでも米国生化学会・分子生物学会(ASBMB)はExperimental Biologyとして他の学会と協調した大会を開催しています。今年、米国細胞生物学会(ASCB)はEMBOと共同で年会を行うようです。わが国の様に、各専門分野に学会が存在して各々が独自の年会を行っているのは、国際的に見たときに極めて特異な状況であり、いずれ破綻すると思っています。

      水島:今回は事前参加登録者数7915名、演題登録数4774ということで、BMB2015より多くなっています。コンソーシアム形式のインパクトがあり、期待されているように思われます。現在までの感触はいかがでしょうか?

      大野:若者の人口減少、大学院博士課程の学生の減少、生命科学分野での研究者の減少などを考えれば、今回の大会の参加者も減ることを覚悟していました。それが、少なくとも減ってはいないということですので驚きまました。原因の分析は今後やらなくてはなりませんが、生命科学系学会の合同大会であると言う点が若い研究者へのアピール点になったのかもしれないと思っています。

      水島:狙い通りだと思いますが、生化学会と分子生物学会以外の協賛学会からの事前登録者もかなりいるようですね。そのような方が発表できるのが今回の特徴の一つですね。

      大野:そうです。今回は、分子生物学会及び生化学会以外の学会は協賛の形でありハードルは低かったと思います。協賛学会の会員が、分子生物学会及び生化学会の会員と同じ資格でこの大会に参加出来ます。ところで、学会の年会は学会行事の中で最大のものです。したがって、他の学会と合同して年会を開催する事は、学会の存立基盤にも関わる重大問題であり、議論の尽きない部分もあります。しかし、ここで是非強調させていただきたいのですが、今回のConBio2017の試みに対し、生化学会、分子生物学会は、自身の存立基盤を脅かしかねない今回の企画に対して、全面的に支援をしてくださいました。主宰者である篠原先生と私から、両学会に対して、こころからお礼を申し上げます。

      水島:いえいえ、こちらこそ大変魅力的な大会を企画していただき、大野先生と篠原先生にお礼を申し上げないとなりません。

      大野:生化学会会長の水島先生もそうだと思いますが、学会の責任者になると、学会の存続に責任を持つことになります。その構造が、わが国に2000もの学会がひしめいている理由の一つかもしれません。しかし、そもそも研究者にとって、学会はツールのひとつであり、目的やゴールではありません。次世代の研究者の勧誘と育成に、学会に何が出来るのかという視点で考えた時に、その答えの一つが、今回のConBio2017の試みです。

       

      後期事前参加登録について

      水島:今回は「後期事前参加登録」という制度があるようですが、それについてご説明していただけますか?

      大野:これは、通常の事前登録をしていない当日参加者にのみ関係することです。今回はバーコード付きの参加証を発行しますので、電子データの入力が必要です。当日の大会受付で窓口に並ぶことになります。一方、当日でも自分のスマホやPCで登録すれば、窓口に並ぶ必要はありません。通常の事前登録をされていない方は、「後期事前参加登録」を強くお勧めします。

      水島:参加費は変わらないわけですね?

      大野:「後期事前参加登録」の参加費は当日参加費と同じになります。ただ、当日の大会受付で窓口に並ぶ必要がありません。強くお勧めします。

       

      ConBio2017参加者にメッセージ

      水島:最後に、ConBio2017参加者にメッセージをお願いします。

      大野:はい。3つあります。

      1.ご自身の研究分野で、発表とディスカッションを通じて大いにご自身をアピールしてください。

      2.普段は絶対に触れないような分野で、予想を超えた新しい発見、新しい出会いをしてください。

      3.学会の大会の運営が、私達研究者と多数の協賛企業との共同作業によるものであることをご理解の上、協賛企業の企画にもご参加いただけると大変ありがたいです。

      水島:大会前の準備でお忙しいところ、本日はどうもありがとうございました。

      それではみなさま、ConBio2017でお会いしましょう!

      会長 水島昇

  • 会長便り第5号:生化学会の構成について

    •  そろそろ次期の代議員選挙の時期になりました。そこで、今回の会長便りでは生化学会の仕組みについてご紹介したいと思います。2012年の公益法人化以降、体制が少し複雑になりましたので、古くからの会員のみなさまにもわかりにくくなっているかも知れません。

       日本生化学会は2000年(当時中澤淳会長)より代議員制をとっており、2012年の公益法人化にともなってさらに新しい代議員制となりました。正会員約40名につき1名の割合で「代議員」が選出され、その方々が公益社団法人日本生化学会の「社員」となります。社員とはなかなか耳慣れない言葉だと思います。総会も社員(=代議員)によって構成されます。奇妙に思われるかも知れませんが、代議員ではない会員の方々は(実際はほとんどの生化学会会員がそれに該当しますが)、この会社の制度上は社員ではないということになります。代議員は選挙で選ばれますが、これは支部毎に行われます。支部の会員数に応じて代議員数が決められます。現在は合計171名の代議員がいます。代議員の任期は2年で、1回に限って再選が認められます。つまり、2回続けて代議員を務めた場合は、次は被選挙権がなくなります(私も次は被選挙権がなくなります)。

       次に、代議員の中から監事と理事が選挙で選ばれます。監事は3名以内で、学会の見張り役となっていただきます。理事は定款上20~25名となっていますが、現在は24名です。その選出は生化学会独自の方法によります。生化学会には、医学・歯学、理学、農学・工学、薬学の4つの部門があり、それぞれの部門から4名の部門推薦理事が選ばれます(計16名)。それに加えて、8つの支部の各支部長が支部推薦理事となります。最終的に総会で承認されると理事が決定します。このような仕組みによって、部門間の偏りなく理事が選ばれますし、支部から理事会への提案・報告がスムーズになります。さらに理事の互選によって、会長1名、副会長2名、常務理事6名が選出され、実質的な執行部として学会の運営にあたります。

       少しややこしくなりますが、代議員とは別に、生化学会には「評議員」制度があります。評議員は法人化に移行する前から生化学会にあった制度ですが、公益法人になってもこの制度が維持されています。教授や独立准教授などのいわゆる研究室主宰者(PI)が評議員となる資格をもっており、評議員等の推薦に基づいて理事会で選出されます(詳細な資格は学会HPをご覧下さい)。評議員には任期はありませんので、評議員は生化学会の教授総会のような位置づけになります。現在は約800名が登録されています。生化学あるいは生化学会に関連する研究者に一斉に連絡を取れるので、実質的にはとても便利で機能的なグループとなっています。細則では、評議員は学会運営に関わる意見を理事会に提出することができることになっています。もしお近くで新しく教授、独立准教授、部門長になられた方がいらっしゃいましたら、評議員に推薦していただけたらと思います。評議員はもちろん代議員を兼ねることもできます。

       さて、代議員選挙のご案内をもうすぐ差し上げることになります。学会にとってはとても重要な選挙になりますので、投票をどうぞよろしくお願い申し上げます。

       

      追伸:今年も早石修記念海外留学助成の募集を行います。募集時期は昨年より早い7月の予定です。ご期待下さい。

       

       

  • 会長便り第3号 ~Journal of Biochemistry:Editor-in-Chief 菊池章編集委員長に聞く~

    • 前回の「生化学」企画委員長横溝岳彦教授との対談に続き、今回はJournal of Biochemistry(JB)のEditor-in-Chief(編集委員長)である菊池章教授(大阪大学)と対談しながら、生化学会の英文誌JBを紹介していきたいと思います。対談は、第89回大会(山本雅之大会長@仙台)で行いました。

      水島:今年でJBのチーフエディターとして3年目になると思いますが、JBについてどのような思いをもたれていますか?

      菊池:歴史を感じますね。JBは柿内三郎先生が我が国からの研究成果を英語で発表できる学術雑誌の必要性を認識され、私財を投じて1922年に刊行されました。実は日本生化学会の設立より3年も早いのです。当時の日本の医学教育では、外国語としてはドイツ語が主流であったはずですが、英語での国際誌を発行しようと考えられた彗眼に感銘します。kikuchi20161006

      水島:そうですね。「Journal of Biochemistry」という直球の名称を使っていられるのは、世界的にもいち早く目をつけた証だと思います。

      菊池:そのような先人の志を大切にしたい、というのがエディターとしての思いです。ただ、生化学という物質を基盤にして論理を組み立てていく学術体系が今後も科学の中心的な位置を保ち続けることができるのかというと、それはいろいろな考えがあるかもしれません。

      論文の審査プロセス

      水島:現在のJBの方針と、投稿論文の審査プロセスを教えてもらえますか?

      菊池:今は年間約250編の論文が投稿されてきますので、月にすると20-25編です。これにすべて目を通します。結構、厳しいですよ(笑)。出張中に事務局からメールが来るとプレッシャーになります(大笑)。論文内容の質や体裁、スコープなどの問題で、おおよそ1/4がその場でリジェクトとなります。残りの3/4を最も適した分野エディター(部門編集長:6名のうちの1名)に回します。分野エディターはassociate editor(編集委員:60名)を選出し、最終的に2名のレフェリーへ論文審査を依頼します。平均すれば3週間以内に審査結果がassociate editorから著者へ通知されます。全体としては、30-40%が採択され、日本からの投稿論文の採択率は50%を超えています。

      水島:スピードが速いのは重要ですね。

      菊池:Decisionまでに時間がかかる雑誌には私も投稿したくありません。審査の速さは、研究者にとって、投稿先を考える上での重要な要素だと思います。

      水島:反対にご苦労されていることは?

      菊池:すべての投稿論文について、いわゆる「コピペ」チェックを事務局で行っていますが、残念ながら一部の論文にはそれを疑わせる結果がでてきます。

      水島:そのような場合はどのように対応するのですか?

      菊池:JBは国際組織「Committee on Publication Ethics (COPE)(注1)」のメンバーなので、不正の疑義に対する対応はそのガイドラインに従っています。定義や方法(Methods)が論文間で似ているのはやむを得ないとしても、結果や考察などに他の論文と類似または同一と思われる箇所があった場合は、著者に差し戻して理由を求めます。その反応によって、再審査するか、リジェクトとするかを決めています。

      水島:大変な作業ですね。

      菊池:そうなんですが、JBとしては質を保つことがなにより重要です。厳しく審査していることが外に伝わることによって、いい加減な論文の投稿が自ずと減ってくることを期待しています。

      JBの良いところ

      水島:では、JBの良いところを思いっきり宣伝お願いします。

      菊池:はい。JBは何よりも「オーサーフレンドリー」なジャーナルです。3つの特徴があります。1つめは安価であること。投稿料は無料ですし、図表のカラーもオンライン版であれば無料です(冊子体のカラーは有料)。

      水島:それは良いですね。雑誌によっては、アクセプトの嬉しい知らせに気持ちが緩んでいるすきに、高額な請求を送ってくることもありますからね!(笑)

      菊池:2つめは、さきほど述べたように審査が速いこと。3つめは、特に重要ですが、日本人エディターと相談しながら審査を進めることが可能であることです。

      水島:日本の雑誌ならではの特権ですね。

      菊池:海外は海外で、それぞれのジャーナルがやっていることです。他グループとの競合、学位審査、留学などの事情で特に急がないとならない場合は、遠慮無くご相談下さい。論文の質が担保されていることが条件ですが、それがクリアされていればできるかぎり急いで審査します。私とエディター、associate editorが最大限の努力をします。

      JB論文賞

      水島:今年も7編の論文にJB論文賞が与えられ、つい先ほど授賞式を終えたところです。昨年掲載された87編の論文の中からの選りすぐりということになりますね。

      菊池:はい。ただ、もっと応募があっても良いと思っています。応募には、JBのassociate editorの推薦か、評議員の推薦を必要とします。ですので、associate editorのみなさんには、JB論文によく目を配っていただいて、良い論文と思えばどんどん推薦して欲しいですね。また、著者の方も、近くに評議員がいると思いますので、お願いして応募することも可能です。

      mizushima水島:JB論文賞には10万円の副賞がありますからね。是非応募して欲しいです。

      菊池:付加価値は高いですよ。ところで、この10万円は筆頭著者がもらっているんでしょ?

      水島:応募者は筆頭著者となっていますが、対象は論文なので、実際のところ10万円をどのように使うかはお任せしているのが現状です。授賞式には留学などの理由で筆頭著者が出席できないこともあり、その場合はラストオーサーの方などが参加されています。筆頭著者は実験に忙しくて、暇なボスがもらいに来るとか(笑)。

      菊池:ボスが横取りしちゃいかんでしょ! あれっ でもうちは宴会に使ったかもしれないな・・

      水島:そろそろ次の話題に移りましょうか。

      現在の問題など

      水島:先ほどはコピペのお話がありましたが、他にどのような問題点や課題がありますか?

      菊池:まずは、JBの国際的な位置づけですね。インパクトファクター(IF)については、前中西会長のときにDORA(注2)による論文評価の提言について生化学会も署名しています。しかし、これは学会として会員の個人評価などの際にIFのみに頼らないということであり、JBという雑誌の位置づけを議論するには意味はあると思っています。

      水島:最近のIFの推移はいかがですか?

      菊池:2~3です。よく引用される総説の有無によって左右されます。本来は質の高い原著論文によってIFが上がっていくようにすべきなのですが、現実はなかなか厳しいものがあります。

      水島:雑誌の質を保つのは本当に大変ですね。

      菊池:質が低下すると悪循環が始まりますので、しっかりとやっていなかないと思っています。私を含めて編集委員はすべてボランティアですので、専任のエディターがいる雑誌と競争するのは並大抵のことではありません。出版社Oxford University Pressでも宣伝したり、毎号2編までは無料で読めるサービスをしたりと工夫をしてくれています。

      水島:論文の投稿数の状況はいかがですか?

      菊池:残念ながら、少しずつですが減ってきており、それも懸念材料です。投稿数やIFが減少傾向にあるのは、JBC等の生化学分野の他のジャーナルも同じかと思います。国際的な学術のトレンドなのかと思いますので、ある意味では仕方ないのかもしれません。かといって、むやみに採択数を増やすと質が維持できませんので、そこは譲れません。日本からの投稿が増えることを期待しています。

      水島:先ほどのJBランチョンセミナーでも十分宣伝できましたか?

      菊池:そのつもりです。でも黒田真也さんの数理モデルの話は、途中難しくてようわからんかったなー(笑)。生化学会で毎年行うJBランチョンセミナーでは、50 歳前後の優れた研究者に方に、PIとしての心構えや分野の切り開き方について講演をお願いしています。黒田さんは、コテコテの生化学研究からシミュレーション(システム生物学)研究に華麗に転身されました。今後も多彩な人材が生化学会ら輩出できるといいですね。

      会員のみなさんへメッセージ

      水島:では、最後に会員のみなさんへメッセージをお願いします。

      菊池:先ほどもお伝えしたように、JBはオーサーフレンドリーな雑誌です。安い、速い、親切の3拍子そろっています。日本が発行する誇るべき国際誌です。特に、日本からの論文の質はとても高いので、是非会員のみなさまからの投稿をお待ちしています。時代と共に技術が進歩して、研究の在り様も変わってきました。いわゆる「Biochemistry」と呼ばれる研究手法を用いて医学・生命科学を推進することがこれからの時代も可能かはわかりません。JBが今後どうあるべきかを考える時期にきているのかもしれません。しかし、生化学会の英文学術誌としまして、柿内先生の崇高な志を受け継いで、日本の学問の進歩に貢献する姿勢を保ち続けることは大変大切であり、これは生化学会ならびに生化学会会員の使命ではないでしょうか。

      水島:今日は、どうもありがとうございました。

      jbs20161006

       

      jbs20161006-2

       

      注1:http://publicationethics.org/about

      注2:http://www.ascb.org/dora/

       

       

  • 会長便り第2号 学会誌「生化学」~横溝岳彦企画委員長に聞く~

    • みなさま、こんにちは。今回の会長便りでは本会の和文誌「生化学」についてご紹介します。個人的なことで恐縮ですが、「生化学」は私の研究人生を決めるきっかけを与えてくれました。オートファジーという言葉や大隅良典先生のお名前を知ったのは、実は1997年1月の「生化学」に掲載された大隅先生の「みにれびゅー」を読んだ時でした。今回は、「生化学」の編集長にあたる企画委員長の横溝岳彦教授(順天堂大学)にお話しを伺いながら、「生化学」を詳しく紹介していきたいと思います。

      水島:こんにちは。横溝さんは現在、企画委員長という立場ですが、それ以前は「生化学」に対してどのような思い出がありますか?

      image001-1横溝:生化学会奨励賞をいただいたときに、「生化学」に総説を執筆したのがとても印象に残っています。自分の研究を長い総説としてきちんと書かせてもらったのは「生化学」が初めてでした。酵素学からスタートして受容体発見にいたるまでの一連の研究の流れを執筆しました。また、脂質研究の分野では「生化学」に多くの総説が掲載されていて、大学院生の頃は、「生化学」で総説を読んだあとに、孫引きで原著を読むという形で勉強していました。それだけに、その雑誌に自分が執筆できるチャンスをいただけたことをとても名誉なことだと感じました。水島さんと一緒の受賞でしたね。

      水島:そうでしたね。私もまとまった分量の総説を書かせていただき、有りがたかったです。横溝さんはいつから企画委員長をやられていますか?

      横溝:2011年1月からですから、もう5年半になりますね。

       

      論文の選考・審査プロセス

      水島:「生化学」に掲載される論文はどのようにして選ばれているのですか?

      横溝:まず、約30名の企画委員と約30名の企画協力委員に「総説」と「みにれびゅー」執筆者の推薦を依頼します。推薦された執筆者と執筆内容を、年に2回開催される企画委員による会議で審議して候補者を選んでいます。総説は原則として研究室主宰者(PI)に依頼し、ある程度の期間をかけて成し遂げられた一連の研究について、その周辺を含めて執筆していただいています。総説では著者の研究の流れや、研究への思いを感じてもらいたいと思っています。一方、みにれびゅーではトピック性のある話題について短く解説していただいています。

      水島:みなさん、忙しくてなかなか書いてくれないとか?

      横溝:ところがそんなことはなくて、ほとんど断られませんね(笑)。特に、非会員の先生からは「生化学誌から執筆の依頼を受けて大変光栄です」とのお礼のメールを頂くことも多いです。

      水島:論文は自分から投稿することもできるのですよね?

      横溝:はい。会員からの投稿も受け付けています。自分で直接投稿することもできますし、企画委員に売り込んで推薦が可能かどうかを聞いてみるという手もあります。また、年に3回の「特集」企画があります。これは支部選出の企画委員を中心に、自由にテーマを選んでいただいています。

      水島:投稿後のプロセスはどのようになっていますか?

      横溝:原則として2名の委員で査読します。推薦した企画委員と、私か青木淳賢編集総務(東北大学)が論文内容の査読を担当します。また、事務局には生化学事典にならった用語や図の体裁などをチェックしてもらいます。ほとんどの場合は一度のリバイスを経てアクセプトとなります。2015年は総説は44報、みにれびゅーは57報掲載しました。

      水島:大変な努力によって論文の質が保証されているということですね。

       

      その他のコーナーについて

      水島:他にもいろいろとコーナーがありますが、特に宣伝は?image002-2

      横溝:「北から南から」というコーナーで研究室を紹介してもらっています。特に、ラボをもってから間もない研究者に、できたてのラボを紹介してもらっています。

      水島:なかなか面白いですよね。これは研究室をもってからの年数とか制限はあるんですか?

      横溝:特にそのようなことはありません。自主投稿は大歓迎ですので、是非ラボ紹介の原稿をお寄せいただきたいと思います。大学院生募集、ポスドク募集、という宣伝も歓迎します。

       

      オンライン化について

      水島:2014年からは「生化学」はオンライン版も始まり、会員は全員無料で閲覧できるようになりました。一方で、冊子体は有料配付となり、冊子体購読者は大きく減りました。だいぶかわりましたか?

      横溝:机においてパラパラとみるという機会が減ったと思います。これはやはり心配のひとつです。一方で、若い方はそもそもウェブ閲覧に慣れていて、本があっても読まないことがあるのかもしれません。メールで目次を配信すると、当日はかなりクリックされているようなので、これも時代の流れだと感じています。

      水島:私もメールが届くと目次に目を通しています。読みたい論文にワンクリックでいけるのは便利だと思います。他の利点はどうでしょうか?

      横溝:動画が貼り付けられるようになりました。これはまだ知らない方が多いんじゃないかと思いますが、オンラインなので、顕微鏡イメージのムービーなどを論文に含めることができるんです。是非活用して欲しいですね。

       

      編集の方針など

      水島:編集をしていて困ることや工夫していることは?

      横溝:執筆していただく分野が偏らないようにいつも気を遣っています。そのために、企画委員や、より若い世代の企画協力委員を幅広い分野から選ぶように心がけています。また、企画委員が交代するときも、後任は単独指名ではなく、複数の候補を挙げてもらって、その中から全体のバランスを考えながら選ぶように工夫しています。

      水島:全体の運営はどうでしょうか?

      横溝:私の任期中には、それまではほぼ消えかかっていた「北から南から」を発掘したりはしましたが、編集方針の大きな枠組みについてはいじってきませんでした。今後は少しずつ検討しても良いかと思っています。

      水島:医学に関連する雑誌は多くある中で、「蛋白質核酸酵素」や「細胞工学」がなくなりましたよね。

      横溝:「生化学」では、流行にとらわれない基礎的なしっかりした仕事を紹介することが大事だと思っています。また、必ずしもトップジャーナルに掲載されたものだけではなく、価値のある研究だと思えば「生化学」では積極的に取り上げています。「蛋白質核酸酵素」や「細胞工学」が休刊になった今、「生化学」はもはや生化学会だけの雑誌ではないと自負しながら編集を行っています。

       

      会員のみなさんへメッセージ

      水島:最後に企画委員長の横溝さんから会員のみなさんへのメッセージをお願いします。

      横溝:「生化学」はきちんとした研究を日本語で読める貴重な和文誌です。しかも会員であれば無料で読むことができます。是非活用して欲しいと思います。若い研究者の方には、自分の研究と関係の無い記事でも、読んでみることをお勧めします。水島さんのように人生が変わるかも知れませんよ。また、企画委員や企画協力委員はボランティアで頑張っています。良い点でも悪い点でも、フィードバックをいただけることが何より嬉しいのです。お褒め・お叱り・ご意見など、何でも事務局まで連絡いただきたいと思います。

      水島:どうもありがとうございました。

      image003-3

       

       

  • 会長便り第1号:表彰制度

    • 生化学会の表彰制度について

      みなさまこんにちは。会長に就任してあっというまに2ヶ月経ちました。昨年12月には日本分子生物学会との合同年会がありましたが、本会の遠藤斗志也会頭と日本分子生物学会の影山龍一郎年会長をはじめとする大会組織委員のみなさまのおかげで盛会のうちに幕を閉じることができました。大会で活発に発表・議論いただきました会員のみなさまにも、この場を借りて厚く御礼申し上げます。本会HPトップページの写真も更新していますので、どうぞご覧ください。来年度年会は生化学会の単独開催となり、山本雅之会頭により9月25日(日)~27日(火)に仙台で開催されます。是非日程を確保いただき、ご準備をお願いいたします。

      さて、今回は生化学会の表彰制度について紹介したいと思います。先日会員一斉メールでもご案内しましたように、本会に関連して以下の4つの賞があります。

      授賞 選考 設立 対象 副賞

      日本生化学会

      奨励賞

      本会

      本会

      1955年

      40歳未満

      2013年以前

      の入会者

      30万円

      日本生化学会

      JB論文賞

      本会

      本会

      1993年

      JB掲載論文

      10万円

      柿内三郎記念

      奨励研究賞

      (助成金)

      倶進会

      本会

      2004年

      40歳未満

      50万円

      (助成金)

      柿内三郎記念賞

      倶進会

      本会

      2006年

      年齢制限無し

      100万円

      最も歴史があるのは奨励賞です。過去の受賞者を設立時までさかのぼって更新したリストをHPにアップいたしました。http://www.jbsoc.or.jp/support/encouragement 1955年設立当初から年齢制限が設けられていますが、受賞者のお名前を拝見いたしますと、錚々たるメンバーです。山川民夫先生(1955年)、勝沼信彦先生(1957年)、岡崎令治先生(1961年)、西塚泰美先生(1963年)・・・という感じです。このような偉大な先輩方にも当然30代はあったわけで、その後の大活躍の足がかりとなる研究テーマで奨励賞を受賞されています。まさに登竜門といえるでしょう。僭越ながら私も2001年に本賞をいただきましたが、私自身にとりまして学会や財団関係の初めての受賞でしたので、大変嬉しかったと同時に、この分野でこれからももっと頑張っていこう(いかなければならない?)と気持ちを新たにしたことを思い出します。副賞は設立当初からずっと変わらず30万円のようですが、この賞には金額を超えた価値があるのです! 新進気鋭の若手研究者の方がいらっしゃいましたら、自薦・他薦を問いませんので是非ご応募ください。「2016年10月1日現在で満40歳未満」という年齢制限があります。今年10月以降に40歳になる方は今回が最後のチャンスです。どうぞお見逃し無く!

      JB論文賞は、生化学会の英文誌Journal of Biochemistryに掲載された論文が対象となります。筆頭著者が応募者となり、論文そのものが審査されます。授賞枠は最大10件です。JBに掲載される全論文数からすると、比較的確率は高い(?)ようにも思われます。JBのことはまた別の機会に紹介させていただくとして、どうぞJournal of Biochemistryへの積極的な投稿をお願いいたします。

      生化学会に関連して二つの柿内三郎関連賞があります。三郎は「さむろう(Samuro)」と読みます。柿内三郎先生は東京帝国大学の第2代医化学教授で、後に講座名として「生化学」という言葉を初めて使われた方でもあります。ちなみに、私の教室のあるフロアには柿内先生のお写真と銅像があります。本会設立およびJB創刊に大変ご尽力され、退官後は教育に関する研究・振興などを目的とした財団法人「倶進会」を設立されました。日本生化学会は、当初、倶進会からのご寄付によって柿内三郎記念賞(年齢制限50歳未満)、柿内三郎記念研究助成金を本会名で授与していました。しかし、2012年に倶進会が公益財団法人となったことを受けて、2013年度からこの2つの賞は日本生化学会会員のみならず、生化学分野のより広い範囲の研究者を対象とした倶進会の賞となりました。またこれに伴い、柿内三郎記念賞では年齢制限が撤廃されたことも注目すべきことでした。つまり、この賞は日本の生化学に多大な貢献をした研究者に対して、年齢制限なく、会員非会員問わず授与されることになったわけです。

      一方の柿内三郎記念研究助成金は「柿内三郎記念奨励研究賞」と名称が変わりました。独創的な研究を行っている40歳未満の若手研究者に与えられる50万円の研究助成金です。上記の3つの賞と異なり、こちらは研究費として使用していただくことになります。柿内関連の2つの賞については、倶進会の依頼によって引き続き生化学会がその選考を行っています。

      これらの4つの賞の応募締め切りはすべて4月28日(木)です(必着)。詳細な募集要項は本会HP http://www.jbsoc.or.jp/support にあります。

      奨励賞と柿内三郎記念賞は自薦・他薦を問いませんので、みなさまご自身はもちろんのこと、周囲に適任者がいらっしゃいましたら是非ご推薦ください。積極的なご応募を期待しております。

       

      公益社団法人日本生化学会

      会長 水島 昇

  • バックナンバー 2016年-2017年

    • 第1号 : 表彰制度

      第2号 : 学会誌「生化学」~横溝岳彦企画委員長に聞く~

      第3号 : ~Journal of Biochemistry:Editor-in-Chief 菊池章編集委員長に聞く~

      第4号 : 「2016年ノーベル賞授賞式に参加して」(生化学掲載)

      第5号 : 生化学会の構成について

      第6号 : 第90回日本生化学会大会 大野茂男会頭に聞く

      第7号 : 最後の会長便り